■旅日誌
[2011/8] がんばろう!東北~仙台・ひばり編
(記:2011/9/4 改:2024/11/17)
写真をみる
GW以来しばらくお出掛けできずにいたところ、仙台七夕まつりの初日にあわせて上野→仙台でひばり号が団体臨時列車として運転されるとのニュースを知り、衝動的にチケットを申し込んでしまいました。いままで仙台の七夕まつりには行ったことがありませんでしたが、今年は特別な意味もありとても感慨深いものがありました。日帰りだったので多少あわただしいところがありましたが、少しだけ名取へ寄り道をしています。
※下線部をクリックすると写真が表示されます
 日帰り
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
団体専用臨時/ひばり、仙台、名取
以前の旅日誌にも書いたように、震災以来、どこか落ち着かない気持ちを引きずっていた。個人差はあっても、そう感じる人も少なくなかったのではないだろうか。直接被害に遭われた方のことを思えば、かなり失礼なことではあるが、ただ正直なところ、そんなモヤモヤ感は拭い切れないでいた。さて、今回は前振りの通り、久々のお出掛けである。仕事の方が忙しく土日すらまともに休めない状態が続き、時間的にも気持ち的ににも余裕がなくなったところで、ふと遠出したくなる性分は今に始まった話ではない。そんなときひばり号復活のニュースを知り、相も変わらず後先考えず予約を入れてしまった。そんなに忙しいわけだから休める保証はどこにもないのだが、8月は少し生活パターンを元に戻そうと考えた矢先、とりあえず目の前にニンジンをぶら下げてもう少し頑張ってみることにした。
特急ひばり
どうにか無事に休みは確定した。心配していた当日朝の寝坊も回避できたので、まずは上野へ向かうところから始める。お目当ての列車は団体専用の臨時列車のため、通常の案内掲示板には表示がなかったが13番線からの出発であることは大方予想がつく。ちょっと早めに着いたつもりではあったが、既に多くの人でごった返していた。こういう景色を眺めるのも何だか久しぶりだな…。これから朝の開店に向け、荷物を運び出しす人が多く行き交っていたが、怪しい群集と錯綜して少しばかり混沌としている。そうこうしてるうちに、本日の主役、国鉄色485系特急電車入線してきた。いわゆるリバイバル運転とあって、早朝にもかかわらず趣味的追っかけ連中はますますヒートアップした様子だった。
特急ひばり
先日引退した雷鳥の定期列車を思えば、6両編成というのはやや物足りなさはあったが、上野駅でたたずむ懐かしい塗装の車両はなかなか絵になっていた。にわかづくりのハリボテではあったが、L特急マーク入りのひばりのHMも掲げている。詳しい経緯は分からないが、あかべえ塗装で磐越西線を走っていた編成が国鉄色になり、今日のようなイベントにも一役買うようになったらしい。直前になって申し込んだので、窓側の座席ではなかったが、まぁ細かいことは気にしないことにして久しぶりの遠出を満喫することにしよう。列車は8時過ぎに上野駅を出発、およそ5時間半かけて仙台へと向かう。ひばり号といえば、東北新幹線が開業するまで、首都圏と東北を代表する都市=仙台を結ぶ看板列車であった。個人的にはあまり馴染みはなかったが、はつかり、やまびこ、つばさなど主役級のL特急が30分ヘッドでびっしりスジが引かれていたのはかすかに覚えている。他にもあいづや急行まつしまなどが思い浮かぶが、今となってはどれも昔のこと、華やかな時代の一翼を担っていたのは確かだ。床下のモーター音を聞きながら、ふと、そんなことを思いが過ぎった。
特急ひばり
往年のひばり号は3時間半で上野仙台間を往復していたらしいが、今日は5時間半かけて走るスジが引かれていた。特に黒磯までは普通列車の合間をぬって走らなければならないので無理もない。臨時列車の宿命なので仕方ないが、新幹線とはまた違うスピード感はそれはそれで心地よい。黒磯駅停車中に電源の切り替えがあり、関東圏を抜ける。沿線にはカメラを構える人の姿がちらほら見受けられる。途中、宇都宮、郡山、福島とわずかばかりだがドア開放扱いの停車もあり、妙な歓迎を受けるものの、途中での人の出入りはほとんどなかった。乗ってる客層も下品な連中とは少し違うためか、車内のグッズ販売も混乱なくスムーズに行われる。どうしたものか、郡山の薄皮饅頭が無性に食べたくなったので、お土産にひとつ買ってみるととひばり号の掛け紙が施されていた。こういう小さな演出もうれしいものだ。今回は、びゅう商品による団体専用の列車であったが、記念乗車票のほかにもひばり号のデザインの入ったお弁当も付いてくる。朝早かったせいもあってお弁当が配られると早々にがっついてしまったが、お弁当の掛け紙については、さらに1枚きれいな状態で後から配られることになる。全国的に不安定な天気が予想された中、途中、スコールのような雨に見舞われ、それでも列車は何事もなかったかのように北上を続けた。やがて終着の仙台へ到着、今回のひばり号の復活運転はこれで幕を下ろした。
名取・閖上
仙台駅に降り立ち、改札を抜けると早速大きな七夕飾りが視界に入ってきた。今年の七夕まつり特別な意味を持ってるのは言うまでもない。実は仙台七夕へ来たのは初めてのことで、例年ならどれだけの賑わいを見せているのか、その辺りの事情は定かではない。震災の被害の大きさからも祭りの開催も危ぶまれていたが、とにかく開催することに意味があったと言える。節電など気をつかうことも多かったと聞いているが、逆に祭りを行うことで復興につなげようという機運も高まったとも考えられる。いずれにせよ、いつものように七夕まつりが開かれたことはとても喜ばしいことだったに違いない。
名取・閖上
ところで、ひばり号に乗ろうと決めたのはほんの思いつきのことだったが、仙台へ行くならば…ということで、実は行ってみたい場所がひとつあり、足を延ばしてみることにした。3月11日の地震のあと、仕事が手につくはずもなく何でもいいから情報を追い求めていたところ、確かNHKだったか、ワンセグ画面からショッキングな映像が、、、宮城県で津波が畑やビニールハウスを飲み込む様子が映し出されていたのはあまりにも強烈で、いまでも昨日のことのように覚えている。まるで映画でも見てるかのようで、これほど現実のものとして受け入れたくない気持ちになったのは過去にも例がない。広大な平野という点からも仙台空港アクセス線の高架から見た風景を思い出し、名取川の河口付近であることが何となく思い浮かんできた。そこには閖上(ゆりあげ)地区という場所があり、難読地名でもあるのだが、断片的に記憶していたことが震災後しばらくしてひとつにつながってくるようだった。阿武隈川から名取川にかけて遊水地的に使われてた運河があったり、近くにある閖上港の朝市はとても活気があったとも聞いている。ガイドブックなどに紹介されるような場所ではないのだが、そんなところを街歩きするのが結構好きで、一度は行ってみたいと思わせる場所のひとつでもあった。
仙台・七夕まつり
ところが、今回の津波で壊滅的な被害を受けしまい、町全体が消失してしまったというのは後のニュース等で知った。そんな折、今回ひょんなことで仙台を訪れることになったのだが、もしかしたら近くまで行けるかも?という気持ちもはたらいてとりあえず名取駅まで出てみることにした。事前の情報ではコミュニティーバスは運休中とのことだったが、わずかばかりの本数が閖上の手前まで運行してることが判明、ところが次の便まで1時間以上空いてしまうので、それなら…と思い切って歩けるだけ歩いてみることにする。幸い、熱中症になるようなひどい猛暑というわけでもなく、にわか雨も大丈夫な感じだ。名取駅を背にまっすぐ道なりに1時間ほど歩き、仙台東部道路を越えたあたりから、津波の被害がだんだん分かるようになってきた。5ヶ月も経ったのでずいぶんと片付いた感じではあるものの、それでも道はゆがみ、多くの家で屋根などが損壊し、押しつぶされたがれきが片付けられずに残されていたり、ところどころで津波の痕跡がみてとれた。また一方で、一見、空き地のように見える場所でも、垂れ下がった電線からここに家があったことを物語っている。津波をかぶってしまった水田は手の付けようもなく、海岸から何キロも離れた場所であっても未だ漁船が撤去できずに置かれていたりと、被害の大きさは想像以上だった。いよいよ閖上というところまでやってきたものの、その先は簡単に入れる様子ではなく、無理に行ったとしても単なるよそ者の冷やかしになってしまうので、ここは自重して引き返すことにした。先の方が見渡せると思って登った五叉路に架かる歩道橋は、実はYouTubeで見たものであることに後から気が付くのだった。
仙台・七夕まつり
その後、美田園駅まで歩き、つい先日運転を再開したばかりの仙台空港アクセス線仙台まで戻ってきた。空港までは美田園駅から代行バスが往復しており、少しずつではあるが復興に向けて動きだしているようだ。結局、トボトボと2時間ほど歩き通してしまったが、近くには仮設住宅があったりと、まだまだ大変な時期にあることには違いない。歩きながらいろいろ考えてしまったが、ただただ祈ることしかできない自分はあまりにもちっぽけで何の役にも立たないことに脱力感を覚えたが、とりあえず生きていることに感謝しなければならないのだろう。複雑な思いを胸に、あらためて七夕まつりへと向かうことにした。
仙台・七夕まつり
再び仙台駅へと戻ってきた。東北の夏といえば、やはり祭りのイメージがある。実際に行ったことがあるのは、青森のねぶた祭りと今回の七夕まつりの2回だが、その場の雰囲気というか、人々の思いなどはその場所にいてあらためて強く感じるものである。秋田の竿灯まつりなど、機会があれば行ってみたいものだ。仙台駅から少し離れ、祭りの会場でもあるアーケード街の中を歩いていくことにした。幾重にも続く手作りの笹飾りはとても華やかで、特に今回は特別だったと思うのが、""とか"がんばろう"とかいった言葉が目につく点だっただろうか。中でもひとつ、折鶴でできた大きな飾りはひときわ目立っていた。中央通から一番町通に抜け、定禅寺通へ出たところ折り返してきたが、想像してたよりも人出ははるかに多くかなり賑やかで、大きな七夕飾りと絶え間なく続き人の波を掻き分けて進むのが難しいくらいだった。まだまだ大変なことが多いと思うが、一日も早い復興をあらためて祈りたい。(後日談:その後、東松島市震災復興伝承館を訪問する機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
仙台・七夕まつり
折角の仙台でもあったし、少しでもお金を使おうということで、帰りの新幹線に乗る前にちょっとだけ贅沢な夕食にすることにした。といっても、びっくりするほどのものではないのだが、牛タンにシチューとテールスープ、久々に肉喰ったぞ!って感じだっただろうか?そうこうしてるうちに滞在時間がなくなり、19時過ぎのMaxやまびこで帰路に着く。突然思い立っての仙台往復ではあったが、とても印象深くこの先も忘れることはないだろう。
仙台・牛タン