■旅日誌
[2010/10] 天上界を行くが如く
(記:2010/12/12 改:2015/11/21)
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夏休みもなく、ずっと働きづめだったので、どこか適当なタイミングでひと息入れたいなと考えていました。そんなとき、何気なくANAのサイトをみていたら関空行きのある便の座席で残席1が出ているのを発見、いつもの悪い癖で勢いあまって予約を入れてしまいました。というわけで後づけ的に目的地を決め、吉野と高野山をまわってみることにしました。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
関西空港、吉野山、金峯山寺
数えてみれば6週間連続で土日なく馬車馬のごとく働いていたようで、何となく落ち着いてきたこの土日は完全オフにすることにした。懐かしの往年の特急が復活運転されたり、SLが豪華な編成で運転されたりと、あちこちあったようだが、とりあえずそういう情報にはキャッチアップできてなかったので、どこでもいいからとにかくお出掛けすることにした。前振りの通り、何気なくANAのサイトに立ち寄ったら関空行きNH141便のお得席(!)に空席が出てたので、後先考えず確保、、、相変わらず思考プロセスが逆だが、実はこの便、知る人ぞ知る国際線機材の間合い運航で、ビジネスクラスのシートが一般開放されることで有名、以前も一度だけ乗ったことがある。早い者勝ちで座席の予約ができるので真っ先に埋まってしまうところだが、恐らく直前にキャンセルで流れたものと想像できる。例えがよくないが、特急の間合いで入ったホームライナーのグリーン車に、差額なしで乗れるようなもので、空気を運ぶくらいなら座らせてしまえ!というわけだ。(余計分からない?)ひと言に国際線と言っても、B767-300にも新旧いろいろあって、どんな機材が来るのかは当日のお楽しみ、前回は少々年季ものだったが、今回はCLUB ANA Asia(2-1-2)の窓側を取ることができた。もちろん、供食サービスがあるわでもないしパーソナルモニタも使えないのだが、ジーコ、ジーコ、、、と座席のリクライニングスイッチをいじってるだけでもそれなりに楽しいものだった。
ANA・NH141便・関西行き NH141便の機内の様子
今回、行先が関西方面になったいきさつだが、実はもうひとつ理由があった。朝の羽田では7時~8時代に例外的に陸地寄りのA滑走路(34L)を北向きの離陸に使うことがある。騒音問題に配慮して通常は海上を通るルートで離着陸が行われるが、通称、ハミングバードディパーチャーと言ってその筋(?)では有名で、混雑緩和を理由に、西に向かう便で比較的騒音の少ない機種で5便まで認められたいわば"特例"である。特に北風になりがちな冬場に多くみられ、1タミから快晴の富士山をバックに撮影するといい絵が撮れるという。でもって、このNH141便がハミングバードにあてがわれる確率が意外と高く、今回はそれも期待していた。結果は2度目にして当たり!いつもの2タミ69番スポットからNH141便はプッシュバック、すぐ先の通常離陸に使うA滑走路(34R)に向かうと見せかけいきなり方向転換。一方通行を逆走するかのように動き出したときは思わず心の中でキターー!とほくそ笑んでいた。
関西空港
以前、見学会で入ったことのあるJALのハンガーを右手に始動、離陸後上昇するとすぐさまレフトターン、大田区の住宅密集地を眼下に180度南向きに方向を変えるのだが、その前に事件発生…。オープン直前の国際線ターミナルの横を滑走中になんとA380が視界に飛び込んできた。一瞬、幻かと目を疑ったが、ずんぐりむっくりの超どデカボディーの4発機は他に見間違うはずがない。ご丁寧にA380という大きなロゴまで入っていたが、そんなデザインはシンガポール航空にもエミレーツにもない。あっという間に通り過ぎてしまいよく分からず、結局、後になって調べてみたら、この日は地上設備の実地検査のためにわざわざフランスからフェリーされてきたエアバスの機材とのことだった。当面、羽田にA380が就航する予定はないので、非常に珍しい光景をかなりレアな角度から目撃したことになる。離陸時なのでデジカメも使えず記録に残せなかったが、それでもいいものを見せてもらった。(苦笑)ちなみに21日には国際線ターミナルとともにD滑走路の運用が始まるので、このままハミングバードディパーチャーが続けらるのかはよく分からない。こんどはD滑走路を狙わないといけないかも?
和歌山線
高度を下げながら紀伊半島を横切り、左手に淡路島を見ながら紀伊水道を北上、大阪湾へ進入した後で神戸空港の上空を右に旋回する。その神戸空港にアプローチするJAL機がすぐ下を通り抜けたりと、相変わらず混雑した空域にいることを実感する。欲をかいて第二滑走路へのアプローチを期待したが、結局、北側からA滑走路へ着陸することになった。午前9時前だというのに関空に立っているのもどこか不思議な気分がする。さて、ここから先は後付け的に決めたスケジュールで、今回はパワースポットのようなところを目指すことにしている。正直なところこれといった動機はなかったのだが、この時期、期間限定で金峯山寺の蔵王権現様の特別ご開帳があったことを思い出し、そういう場所もありかな?という程度のことだった。ところで、その吉野までの行き方だが、関空からなら一旦大阪の中心部へ向けて北上し、近鉄で奈良・明日香方面へ折り返していくのが恐らく通常のルート。ところが、相変わらずのへそ曲がりモードで、和歌山へ南下してから和歌山線に乗り継ぐことにしている。
吉野ロープウェイ
日根野で阪和線に乗り換えて和歌山で下車。ちょうど和歌山線の区間便が出ていくところだったが、百人一首を思わせる人物像がペイントされたラッピングトレインは、かなり目を引く。その旅万葉号を見送ったあと、しばらくホームで次の列車を待つ。続いてやってきた桜井線へ直通する奈良行きは、これまた2両編成のロングシート車で、いまひとつ旅気分といった感じにはなれない。和歌山を出たあと市街地を抜けると紀ノ川沿いにしばらく進み、やがて車窓の様子が変わってくる。気がつけば山深いところを走っていた。
吉野・金峯山寺
2時間近く乗り通し、吉野口近鉄線に乗り換え、終点の吉野駅までやって来た。思い起こせば、ここに来るのは純粋に乗りつぶし目的で立ち寄ったとき以来になる。随分と奥まったところまで来てしまった感じだが、さらにロープウェイで山の上の方を目指す。お店が並ぶその先の方へと進み、ポツンと待ってた年季を感じさせるロープウェイに乗り込む。数分して吉野山へ到着、山といってもひとつの山があるわけでなく、ここら一帯を吉野山というらしい。吉野と言えば桜、いまは紅葉の時期とも違いタイミング的には微妙でだったが、ハイシーズンでもない。吉野山は古くから山岳信仰の霊地とされ、仏教、神道などを越えた日本古来の山林修行の場である。歴史についてはあまり詳しくなかったが、今日はその中心的存在である金峯山寺へ出向き、蔵王権現の特別開帳に行ってみるつもりでいる。
吉野・金峯山寺
山間の狭い道にはお土産屋が連なり、しばらく行った先に最初の黒門がある。さらに進むと少し高い場所に金峯山寺仁王堂が見えてくる。階段を登り仁王堂をくぐるといよいよ本堂へとたどり着く。金峯山寺のご本尊である蔵王権現は、普段は一般に公開されることのない秘仏であり、今回は平城遷都1300年を記念に特別開帳となった。なかなかない機会だったので、そのお姿と対面してきたが、インドや中国由来の仏様ではなく、日本独特のものだという。三体の権現像には、その大きさもさることながら、荒々しくも凛々しい姿は見る者を圧倒し、しかしながらどこか自然と引き込まれるものがあった。これだけでも、ここまで来た価値があったなと思った。
吉野山
金峯山寺を後にして、しばらくその先の宿坊なども見ながらひとまわりしてみた。現代文明のおかげでこんな山奥まで何の苦もなく来れてしまうわけだが、移動手段のなかった昔は本当に霊験あらたかな場所だったと実感できたのかもしれない。この場所に留まって、どこか宿坊にでも泊まってみようかとも思ったが、今日はもう少し先まで移動しておくことにしている。帰りもロープウェイを利用し、近鉄線に乗り継いでいくことになった。やはり、桜の時期に来てみたいものだ。
吉野山
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
高野山、金剛峯寺、南海高野線/天空
吉野駅から数駅移動したとこで偶然みつけた格安宿だったが、意外と過ごしやすく場所的にも好都合でとてもいい選択だった。今日はパワースポットのはしご(?)で高野山へ行くことにしている。下市口駅から、あらためて近鉄線に乗って移動を開始する。昨日も乗り継いだ吉野口和歌山線に乗り換え、橋本まで移動する。途中、スイッチバックのあった北宇智駅を通過、昨日は混雑して駅の様子が分からなかった、窓越しに見た風景からはかすかにその名残が感じられた。
高野山ケーブルカー
橋本駅から今度は南海線に乗り換え、再び山の中へと進んでいく。高野山もまた、古くから信仰の地として知られている場所である。電車で行けるのは途中までで、終点の極楽橋からは、ケーブルカーに乗っていかなければならない。山上の高野山駅からはさらにバスで移動することになる。ここも乗りつぶしでとんぼ返りしたとき以来のことになるが、どこか歴史を思わせる駅舎は確かに記憶に残っていた。を出たバスは、狭くくねくねとカーブの続くバス専用の道路をゆっくりと進み、最初の女人堂で停車、かつて高野山は女人禁制の場所とされ、ここがその境目とされた場所である。女人堂を過ぎると、やがて大きな宿坊が立ち並ぶ町並みへと入っていく。
高野山・金剛峯寺
さらにバスで先へと進み、奥の院の前で下車、ここからは歩いてみることにした。バスを降りたところから奥の院までは数百メールはあるのだが、ここら一帯の敷地は墓地となっており、歴史上の人物、大企業のお偉いさん(?)、旧家・名家のもの、英霊を祀ったものなど、立派なお墓がいくつもあった。確かにここにいるだけで霊場という言葉の意味を感じるような気がする。やがて奥の院へたどり着き、建物の中にも入ることができるので中を見学させていただくことにした。薄暗い中、言葉では言い表せない雰囲気は、やはりここまで来てみないと分からないものだ。読経が流れる中、亡くなられた方のご供養のために来られてる方々の姿がとても印象的だった。お昼前、奥の院を後にして、先程とは別の道を歩いて行くことにした。
金剛峯寺・根本大堂
通り沿いには宿坊が立ち並び、再び高野町の中心部へと戻ってきた。高野山といえば弘法大師ゆかりの地で、ここら一帯は宗教都市だと言ってもいい。その中心にあるのが真言宗総本山・金剛峰寺である。まずはその主殿の見学へと向かう。歴史的、文化財的価値については、いまさらここで触れる必要もないだろう。ひと通り見学を済ませ、建物の外へ出てくると、不思議なゆるキャラに遭遇、地元の期待も理解できなくはないが、雨後の筍のように、これでもかといわんばかりに増殖するキャラクター達はどうにかならないものだろうか?引続きすぐ隣にある壇上伽藍へと向かう。東塔の前を過ぎると、ひときわ目立つ根本大堂が視界に入ってきた。この建物の鮮やかな朱色はこの世のものとは思えない…というのは大げさだが、西堂金堂とひと回りして、金剛峰寺を後にした。結局、奥の院からずっと歩き続けてきたが、3時間くらいの滞在でも確かに何か感じるところはあったような気がする。最後に西門へたどり着いたところで帰りのバスに乗り高野山駅まで戻ってきた。
南海・天空
その後、帰路の途中、ちょっとだけ鉄分を補給すべく南海の観光列車・天空に乗車することにしている。天空は既存の車両の改造したJTのようなもので、大阪難波から直通する特急こうやとも少し役割が違い、橋本駅極楽橋駅の間を毎日2往復している。登場以来、なかなかの人気とのことだが、折角なので今回は前もって予約をとっておいた。早速乗り込むと、眺めのいい方向へ向かってシートが横向きに配列されおり、車内の装飾も観光列車らしく明るく改装されていた。もともとスピードが出せない山岳路線ではあるが、自由席扱いの普通車両とペアを組み4両で運転され、非常にゆっくりとしたペースで景色を楽しむことができる。アテンダントも乗車しサービスにあたるなど、旅気分を味わえる列車だといえる。車両の端にある展望席にも行ってみたが、まだ本格的な寒さを迎える前でもあったので、外の空気に触れながら山間の景色を堪能することができた。橋本駅天空に別れを告げ、天下茶屋で電車を乗り継ぎ関空へ戻ってきた。帰りも空路東京へ戻ることにしているのだが、6月の奈良と同様SFJ便を予約してある。そういえば、となりにゴールドジェットが停まっていたのも同じような気がするが、明日からの元の生活のことをふと考えてしまう。2日間でのパワー補給で、どこまで乗り切っていかれるだろうか?
天空からの眺め