■旅日誌
[2010/11] アジア弾丸ツアー/上海~香港~ソウル
(記:2010/12/5 改:2021/6/28)
(記:2010/12/5 改:2021/6/28)
夏休みがとれなかったことをずっと引きずったままでしたが、"飛び石"の1日を埋めて4連休にすることにしました。ちょうどたまったマイルがまとまって失効してしまうタイミングと合う形になり、クレジットのポイントなどをかき集めると意外と遠くまで行けることが判明、、、勢い余って、上海、香港、ソウルをめぐる弾丸ツアーを決行することになりました。
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1日目
前振りの通り、ちょっと遅めの夏休みとなった。ひょんなことで手にしたチケット4枚(実際にはeチケットの写し1枚なのだが…)をもとに、今回は乗り鉄ならぬ乗り飛(?)に臨むことにしている。タイミングよく羽田の国際線ターミナルが新装オープンしたばかりで、早速利用する機会がやってきたが、格段に導線がよくなったと言われてるモノレールからの乗り換えも試してみたい。というわけで、自宅からは多少遠回りだったが、ちょっと早起きして浜松町まで向かうことにした。
ようやく国際線の定期便が就航することになった羽田だが、確かに期待は大きいものがある。江戸をテーマにした飲食店街(江戸小路)など工夫のあともみられ、免税店と並んであった東京土産の専門店でコリアンエアとアシアナのCAさんがこぞってお土産を買っているのは印象的だった。(ですが、今回の旅で上海、香港、仁川と巡りましたが、残念ながら羽田も成田も貧相に思えてしまい、100倍違うぞ!っと突っ込みたくなりました。アジアのハブというには程遠いようです。)国際線に乗る機会など、そうはないのでひと通り見学してみようと思う。展望デッキから今までとは少し違った角度で空港を眺めてみたり、新しいD滑走路からの離陸と、普段利用する羽田も今日はどこか新鮮だった。
最初の移動となるNH1259便は定刻の10時20分にドアクローズ、だらだらとタキシングしながらD滑走路に向い、多摩川の河口にかかった桟橋部分から東京湾の方へ向けて離陸した。搭乗前にちらっと見えたレジ番号はJA717A、特に確信はないがB777-200ERの系列でも一番新しい機材のような感じがする。上海までの飛行時間はおよそ3時間半、時差が1時間あるので到着は12時50分となり、早ければ14時過ぎには上海市内にたどり着くはずだ。羽田を出た後、東京湾上空で高度を稼ぎ神奈川上空から山梨へ向かうと紅葉の中、富士五湖の姿を見ることができた。その後、名古屋上空で機長からアナウンスがあり、機内サービスが始まる。朝早かった分食事までの時間があいてしまったが、1時間分の時差を考えると、まぁいいタイミングだろう。始まったばかりの弾丸ツアーがこの先もうまくいくことを願いつつ、いつものプレミアム○○○でひっそり乾杯する。
全国的に今日は天気もよく、広島、福岡、長崎とどこを飛んでいるのかがよくわかった。向かい風の中、東シナ海へ出たあと、少しうっつらうっつらしてしまったが、やがて高度を下げていることに気がつく。眼下に陸地が見えてくると着陸へ向け最終態勢に入ったとのアナウンスがあった。うす曇りの中、上海中心部の上空を過ぎていくと何回かに分け右に180度旋回し搭乗機は上海虹橋空港へタッチダウン、日本の空港とは明らかに違う風景と緩やかな減速に、やって来たな…と実感する。どこのターミナルビルに向かっているのかよく分からないまま、途中から先導に付いた車の後を追うようにしてそぞろそぞろとタキシングしていく。先を行っていたJAL便の横のスポットに停められたのもほぼ定刻、順調な飛行のようだった。
上海浦東空港が本格的に使用されるようになってからは、ここ上海虹橋空港は国内線を中心に運用されており、国際定期線は東京/羽田、ソウル/金浦、台北/松山の3路線くらいなものなので、イミグレーションで待たされるようなことはなかった。窓口の若いお兄ちゃん(失礼ながらそんな印象でした。)の対応は、微笑みながらニイハオで始まり、再見で終わる。上海という土地柄なのか、このお兄ちゃんの性格なのか、いままで抱いてた中国のイメージとは少し違う。荷物をピックアップするとX線装置に通す必要もなく、あっさりした印象のまま入国することができてしまった。前回の杭州のときの残りの人民元が手元にもあることだし、とりあえず両替は必要最低限で済ませる。今回はあまり下調べする余裕がなかったので、実はほとんど予習というものができていない。確か地下鉄の駅があったように思うのだが、いま下ろされた第一ターミナルは確かに狭く古くさい雰囲気が漂い、すんなり市内へ行ける気がしてこない。タクシーを捕まえればことはたやすく済みそうだが、それではあまり面白くない。こういうときは人に聞いてしまえ!と、案内窓口へ行って地下鉄の駅はどこかとたずねると、ここに駅はない、外に出るとシャトルバスが出ているのでそいつで第二ターミナルへ行けばいい、ということが分かった。きつそうな口調のお姉さんだったが、英語できちんと教えてくれた。Thank you!と軽く言えば、にこっとYou're welcomeと返される。キーワードさえキャッチできれば、中学校の英語でも十分やり取りできる。要は場数かな…。(後日談:新しい地下鉄の開通はこの10日後のことで、シャトルバスも廃止されたようでした。)
建物の外に出てみると、第二ターミナルへ向かうシャトルバスはすぐに分かった。物流会社だか荷物倉庫だか、ひと昔前風な(?)建物が立ちならぶ中を進み、滑走路のフェンス沿いの細い道を走っていくと、やがて真新しい第二ターミナルの建物が見えてきた。なるほど、規模も新しさも先程の第一ターミナルとはまったく違うのがひと目で分かる。長距離鉄道の駅も隣接するように整備がされていて、こっちに地下鉄の駅があるのも当然、着々とインフラ整備が進んでいるようだ。(後日談:杭州行きの高速鉄道(CRH)も上海南からこちらに起点を移したようです。)降機してから意外と時間がかかってしまったが、ようやく地下鉄2号線に乗車、20分ほどで上海中心部へとやって来た。
南京東路駅を降りたところは見覚えのある風景で、少しホッとする。予約してあったホテルまで歩いていくことにしよう。相変わらず歩行者専用道路は多くの人で賑わっている。つまみ食いしたくなりそうなお店が立ちならぶ道を歩いて行くと、特に迷うことなく10分ほどしてホテルに到着。手元に用意しておいた予約の控えとパスポートを提示しチェックインに向かう。こちらも中国語が話せるわけではないので必要なことは英語でやり取りすることになるのだが、若干不慣れな手つきで対応してくれたレセプションの若い女性は、長く待たせてすいませんと最後に付け加えてきた。No Problemと返すと、ややはにかみながら最後ににこっと微笑む、、、なんだろう…北京あたりとは違う印象をここでも抱くことになった。案内された部屋に行ってみると予想以上にいい部屋で、これは大正解!と確信する。
万博に興味があったわけでもなく、ここに行きたい!という場所があったわけでもなかったので、こんな時期に予定も立てず来てしまったが、もちろん何もしないのではもったいないので、今日は浦東地区へ行って高い建物でも見物しに行こうと思う。再び地下鉄に乗り、黄浦江の向こう岸へ渡る。陸家嘴駅駅で降りて地上に上がると、すぐ目の前に東方明珠電視塔(オリエンタルパールタワー)の姿がでーんと視界に入ってきた。外灘(バンド)から見た光景は上海を象徴する景色としてよく知られているが、その中でも一番目立つこの建物に登ってみようと思う。あぁ、何て単純な発想だろう。(苦笑)さすがに上海を象徴するランドマークとあって、あちこち記念撮影に興じてる姿が目に付く。そういう自分も同じおのぼりさん状態なのだが…。信号もない交差点をサクッと渡り、チケット売り場へ向かう。A、B、Cと3種類ある中、とりあえず一番上まで行けるA券を購入、最初に263mの高さにある真ん中の一番大きな展望台まで登る。運よくエレベータは何機か稼働してたので、それほど待たされることはなかったが、一番上の350mの展望に行くエレベータは定員9名のものが1機しかなく、しばらく行列に並ばされることになる。ようやくその一番高いところまでやってくると、上海の街並みがすべて眼下にあり、周りのビルも見下ろす感じで見える。上空はガスがかかってあまり視界はよくなかったが、360度のパノラマをしばらく楽しむことになった。再び2番目の展望台に戻りあらためて景色など見ておくことにする。外にせり出した場所では足元がガラス張りになっており、いい大人があちこちでキャーキャー騒いでいた。最後に最下層の90mの展望台に寄ってみると外に出られるようになっており、霞んだ中、ちょうど太陽が沈んでいくのが見えた。
日は沈みかけていたが、折角なのでもう1ヶ所だけ寄ってみようと思う。ちょっと距離はありそうだったが、浦東界隈でも一番高い建物がある上海環球金融中心まで歩いてみることにする。振り返ると東方明珠電視塔の姿がなかなか絵になる。ビルの前までやって来てあらためて上を見上げると、とてつもなく高いのがよく分かった。早速中に入り、展望台を目指す。最初に通された部屋で概要の説明があり、次の部屋へと進んでいくのはまるでディズニーランドのアトラクションのようでもある。高速エレベータで上昇していき、さらに一番上の100階フロアへ着いたときはすっかり日は暮れていた。展望フロアに出てみると、こちらも足元が透けて見える構造になっていて、外の夜景を見ながら向こうまで渡っていく。先程、登ってきた東方明殊塔も見下ろすような感じで、やや霞んだ感じだったが、その先の上海の夜景を見ることになった。いまの中国の勢いというか、大陸スケールはやはり違うなとあらためて感じてしまった。
上海環球金融中心ビルを後にして、その先の東昌路駅まで歩いて行き、あらためて地下鉄で南京東路まで戻ってきた。地元の人に混じってそこらのフードコートででも適当に食事は済ませるとして、最後に夜の外灘を散歩してみることにしよう。さすがに週末の宵の口とあって、相変わらず南京路の歩行者天国は多くの人で混雑していたが、こちらも歩いてる人がいっぱいいて賑やかである。黄浦江の向こうの夜景もなかなかだが、オレンジ色を基調にライトアップされた建物もまたいい雰囲気だった。異国の地にやって来たな~などと妙に感慨深いものがあるが、時間が経つのを忘れさせてくれる光景だった。
2日目
弾丸二日目、今日の移動は午後の便なので、午前中は上海にとどまり近場なら十分見てまわるだけの余裕はあった。朝、あらためて外灘を散策するところから始める。歴史を感じさせる街中を歩いて行き、河べりまで出てくると、夜半に雨でも降ったのか地面が濡れており、今日も遠くが霞んで見えた。それでも日は差してきているので、総じて天気は悪くなさそうだ。昨晩の喧騒がうそのように静まり返り、行き交う船の向こうの摩天楼はまるで絵画のようだ。今回は二度目の上海だが、前回は万博直前でどこもかしこもガタガタしていて、ここ外灘の遊歩道も工事中でまったく立ち入れず消化不良気味だった。朝の空気を吸いながら、まぁ、これでよかったのかな?と納得しておくことにする。
さて、散歩したその足で豫園まで向かうことにしよう。ここも前回立ち寄ってみたが、雨も降っていてさらっと通り抜ける程度だったので、今日は豫園庭園に入ってみようと思う。まだ観光客の姿はまばらだったが、入り口前にある蓮の池の淵で開園時間を待つ。9時ちょうどになり、早速見学を始める。それほど広くはない敷地の中には、箱庭のような庭園や河南風の建物がいくつもあり、芸術的にも凝った工夫が多く施されているという。周囲の喧騒をよそに、落ち着いたたたずまいがなかなかいい。それほど時間をかけずに見学を終え、何となく周辺の豫園商城をひとまわりしてみた。買い物をしなくてもただ眺めてるだけでも楽しいとは聞いていたが、確かに人を見てるだけでも飽きない。
ホテルに戻る前に、少しだけ地下鉄を利用して人民広場へと移動してみた。周囲に目を移すと日本にはない凝ったデザインのビルが本当に数多く建っている。これも上海らしい風景と言っていいのかもしれない。人民広場から、何となくダラダラ街中を歩いてホテルまで戻ってきたところ、時間的にもちょうどいいあんばいだったのでお昼ちょっと前にチェックアウトした。(後日談:その後、上海を再訪する機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
ごちゃごちゃと賑やかな裏通りを、昨日とは逆に南京東路駅まで戻ってきた。地下鉄2号線で龍陽路駅まで移動し、一旦ここで下車、改札を抜け地上に上がり空港へ向かうリニアモーターカーへ乗り換える。上海トランスラピッドはもともとドイツが開発したものを持ち込んだとも言われているが、実験的色合いが強いとはいえ営業線として走らせたのは世界でもここが最初だったと記憶している。高速鉄道(動車組=新幹線)でもそうだったが、オリジナルがよその国のものだったとしても、自国のものだと言い張るのはいかにも中国らしい。メンツが一番というのは今に始まった話ではない。まぁ、そういう難しい話は置いといて、今日は趣味的にも高速のリニアモーターカーというものがどんなものか一度試しておきたいと思う。将来的には市内中心部まで延伸されるようだが、いまは郊外にある龍陽路駅と上海浦東空港の間、約30キロを7、8分で結んでいる。最高速度は430キロというのがウリなのだが、時間帯によっては300キロに抑えられ、荒天時も速度規制がかかるらしい。
窓口で当日の搭乗券を見せると割引された金額で切符を買うことができる。X線検査を通して荷物のセキュリティチェックを受けてからホームに上がる。しばらくすると、リニア独特の路盤の上を滑るようにして列車が入ってきた。時速430キロと聞いて、もっとぺったんこ(?)なデザインを想像してたが、意外とそうでもない。早速乗り込むと車内の様子もことのほか平凡だった。列車は音もなくスーッと走りだし、順調に加速していく。残念ながら今回は300キロまでしか出さない時間帯だったのでトップスピードは体験できなかったが、あまり乗り心地はよくなかったように思う。このあたりは日本の中央リニアに期待したいところだ。浦東空港にはあっと間に到着、まだ珍しい乗り物とあって様々な国の人が列車をバックに記念撮影していた。リニアが到着するホームからは右へ向かうと第一ターミナルへ、左へ向かうとと第二ターミナルへと続いており、なかなか合理的なつくりになっている。一方でローソンの青看板とKFCの赤看板が改札正面の目立つところにあったりと、近未来的なものと妙にリアルなアイテムが同居している光景も不思議と面白い。
昨日は上海虹橋空港に降り立ったが、今日は上海浦東空港からの出発である。ソウルもそうだが、この2つの空港の関係は東京で言ったら羽田と成田の関係にある。さて、この先は上海航空のFM811便で香港へ向かうのだが、一応国際線の扱いになるので、ここ上海浦東空港から中国を出る形をとる。というわけで、早々に出国手続きを済ませてしまおう、、、と、その前に搭乗手続きをするためにエアラインカウンターへ向かう。端末を叩いたりどこかに電話したりと怪訝そうな表情で悪戦苦闘してる様子だが、ようやく搭乗券を発行してくれた。多少不安を覚えたものの航空券が発券されたので、荷物を預け身軽になり早々にイミグレーションを抜けておく。(後日談:その上海航空ですが、親会社の中国東方航空とともに10月末でスターアライアンスから脱退、スカイチームへ籍を移したようでその影響もあったのでしょうか、ANAサイトからは"他の手段"で移動という扱いでeチケットから経路が取り消されていました。)
仁川空港もそうだったが、ハブ空港と称するだけあって、その広さは半端じゃない。数ある店舗を見てまわるだけでも十分時間がつぶせそうだが、自由に電源が使える座席やフリーなWi-Fiがあったりとネットが使える環境が揃っているのも嬉しい。ざっと見た感じ指定された搭乗口に該当するスポットはなく、エスカレータで階下に降りるよう指示されていたので、もしやと思いきや、やはりバスでの搭乗となった。手元の搭乗券を見ると、事前指定したはずの座席番号と違ったこともあり、窓口にいた人に申し出てみると、空いてる席ならどこでもいいと言われたので端末を見ながら誰もいない列の窓側に変更してもらった。そんな感じで搭乗時間となり、送迎用のバスで搭乗機へと向かう。どれくらい移動しただろうか、ポツンととまった赤い機体の前で降ろされ、タラップからに乗り込む。使われる機材はウィングレットのないB737-800で、決して古いシップではなかったが、どことなく普通のエアラインとLCCの中間のような印象を受けた。香港便ならやはりキャセイ系のメジャーどこが無難なところだろうけど、こんなローカル線に乗る日本人も奇特な部類に入るのかもしれない。実際乗ってみると空席が目立ち、真ん中あたりに人が集められていた。搭乗してからテイクオフまでは特に問題もなく、時計は確認しなかったが、ほぼ定刻に出発したようだった。FM811便の香港までの所要時間はわずか2時間半ほど、上海浦東を飛び立ったあと、低く立ち込めた雲を抜けると機内サービスが始まる。一応、飲み物類もひと通り揃ってるみたいだし軽いミールも提供されるので、最初の印象ほどサービスは悪くなかった。
ちょうど日が暮れる頃に香港国際空港へ到着、狭い土地に密集する高層建築物は上空からもよく分かった。それと、車が左側を通っているのを見て、あらためて異質な土地へやってきたことを実感する。香港は国際都市らしくイミグレーションで入国を待つ列はまさに人種のるつぼ、あまり経験したことのない雰囲気を肌で感じる。多少時間はかかったものの特に問題なく入国手続きを済ませ、手持ちの現金がまったくなかったので、まずは適当にHK$に両替しておかなければならない。複雑な歴史を物語るように、同額でありながら複数のデザインのお札と丸くない形をしたコインを手にする。すぐ脇では何万円も両替している日本人がいたが、一体何に使うのだろう?人のことはまぁいいとして、とりあえずオクトパスカードと呼ばれるICカードは入手しておいた方がいいと聞いていたので、とにかくそいつを買いに行こう。が、どこで売ってるのかよく分からない。あてもなくうろついても仕方ないので交通案内っぽい窓口へ出向いてみると、愛想のいいお兄さんはHK$150!と数字を示してくれて、その場ですんなり買うことができてしまった。このカードは、日本でいうSuicaやPASMOと同じで、地下鉄やバス、それとフェリーなどの乗り物のほかコンビニでも使える便利なカードで、駅やコンビニでもチャージができる。さて、このまま空港に留まっていても意味がないので、さっさと市内まで移動することにしよう。一番手っ取り早いのが機場快速(エアポートエクスプレス)を利用することで、まずは九龍駅まで向かう。確かその後で、無料のシャトルバスに乗り継げるということまでは調べてある。既に日は暮れてしまったので外の景色はよく分からなかったが、昇ったばかりの満月が煌々とあたりを照らしていたのが印象的だった。快適な乗り心地だったこともあり、本当にあっという間に九龍駅へ到着、出口には改札がなく、大声で何を言ってるか分からない案内役の人に「K1」とだけ伝えると、いくつかある路線からこっちの乗り場へまわれと促される。よく分からないが、まぁいいか、、、スーツケースを抱えたまま、止まっていたシャトルバスに乗り込む。
待ち構えていたバスはすぐに発車し、10分も経たずに九龍の中心部まで到達、あまり予習してなかった割りには不思議なくらいすんなりと来れてしまった。佐敦駅近くでバスを降りると、そこはまさに香港!という光景だった。ハデハデな様子に圧倒されながら九龍の目抜き通りであるネイザンロードを歩いて行くと予約してあったホテルを発見、早速チェックインしておく。建物の外も内も騒々しかったが、今度は慣れた手付きでテキパキと対応してもらい、部屋の鍵を受け取る。いい部屋へアップグレードしといたよ…とのことだったが、設備も広さも申し分なくアメニティーにも気配りが感じられ、こちらも正解だった。確かに安くはなかったが、いわゆる一流どころと比べればコストパフォーマンスはぐっとリーズナブル、、、朝食も付いてるし、インターネットもフリー、移動に便利な場所にあって14時のレイトチェックアウトもOKと申し分ない。ネイザンロードの繁華街に面した部屋だったが、防音も問題ない。5つ星のリゾート目的の超高級ホテルならもっと値段がするはずなので、いい"買い物"ができたようだ。
時計を見るとまだ19時と外出してもまったく問題のない時刻なので、夕食ついでに夜の香港の街でも見物してみることにした。再びネイザンロードに沿って、喧騒の中を歩いて行く。道に覆いかぶさるようにせり出した極彩色なネオン看板、ひっきりなしにやってくるダブルデッカーのバス、無秩序に入り乱れた雑踏はまさにアジア!といった雰囲気だった。とぼとぼ歩いてるうちに尖沙咀へ到着、折角ここまで来たので、ビクトリアハーバーの向こうの香港島の景色でも見ておくことにしよう。
それなりに夜景でも見渡せる場所を…と思い、先へと進んでいく。日本に比べてもはるかに南へやってきたので、気温も高くこの時間でも上着なしでちょうどいい。それにしても異様に人が多いように思えるのだが、みな一様に何かを待ってる様子だった。近くにいた人の会話によると、これからライトアップショーが始まるらしい。時計をみるとあと2、3分で8時になる。そういうことか…と関心しているとちょうど8時になりショーが始まった。香港島側も九龍側も大きな建造物に仕込みがなされており、音楽にあわせて照明やらレーザー光やらが変化する。大掛かりな仕掛けには関心するばかりだったが、15分ほどショーを楽しむこととなった。そんなことも知らないで、まぁいつものように結果オーライだったのかな?と片付ける。(後日談:その後、香港を再訪する機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
なかなかいいものを見せてもらったかも、と自己満足にひたり、今日も雑踏の中で適当に夕食をとることにしようと思う。さて、この先の予定もまだ十分に練れてないので、これから作戦を立てなければならない。明日、香港を発つのは夜の便なので、昼間はほぼ丸々使えるものと見込んでいる。慌しいことには変わりはないが、意外と時間はあるものだ。慣れてしまえば、こんな弾丸ツアーも悪くはない。
3日目
行き当たりばったりの三日目、今日はほぼ1日使って香港の街を見てまわることにしている。といっても、1日では限界があるので、どこまで回れるか分からないが、景色のいいところと繁華街を中心に街歩きはしておきたい。それとできれば、乗り物好きとしては2階建ての路線バスやフェリー、それから香港名物のトラムにも乗っておきたい。
昨日は暗くなってから到着したということもあって、あらためて昼間の街の様子をみておくことにしようと思う。まずはネイザンロードを南下する路線バスを捕まえて、尖沙咀方面へ行ってみよう。とりあえず細かいことは気にしないで、スターフェリーと行先表示されたバスに乗れば、きっとフェリー乗り場まで連れて行ってくれるに違いない、、、そう思って、すぐやって来たバスに乗り込む。前側の運転手さんのいる入口が開いたので、目の前にあるオクトパスカードの読み取り機にタッチして、すぐさま2階席の一番前に陣取ってみた。視線も高く確かにこれは眺めがよい。それにしても、こんなにごちゃごちゃとしたところを器用に運転できるものだなと、思わず関心してしまう…。
そんな感じでフェリー乗り場にやって来た。ビクトリアハーバーの向こうには昨晩、夜景を見た香港島の高層ビル群が見える。香港島には、スターフェリーで渡るのが一番手っ取り早い方法で、地元の人も普段の足として利用している。中環(セントラル)と尖沙咀を結ぶフェリーは便数も一番多く、数分間隔で運行されているようだった。早速、そのフェリーに乗ってみることにしよう。
スターフェリーは1階と2階とで運賃が多少違うようだった。2階席の方が若干高めではあったが、その差は微々たるもので、窓がない眺めのよさそうな席に座ってみた。船はとても合理的にできていて、前にも後ろにも進める構造になっており、座席の背もたれはバッタンと前後両方に倒すことができる。香港は日本の沖縄よりも南に位置していて亜熱帯の気候を呈しており、今日の予想最高気温は25℃と出ていた。フェリーは九龍側を出航し、心地よい海風を感じながら、高い建物が密集している方角へと進んでいく。わずか数分の船旅ではあったが、予想以上に呆気なく香港島へ上陸、あらためて目の前の高層ビル群の凄さに圧倒される。そのビル群をつなぐように長い長い歩道が張り巡らされ、朝の出勤の人の流れに乗りながら先へと進んでいくことになった。
いい加減歩いたところで、交通量の激しい通りへと出てきた。派手な看板のもと路線バスや車がひしめきあっており、そんな中を2階建てのトラムが頻繁に行き来している。恐らくバリアフリーの意味だと思うのだが、横断歩道の信号機は青になると日本ならカッコウ、カッコウ…かピヨ、ピヨ…と鳴るところを、まるで機関銃をぶっ放すような勢いでテェケ、テェケ、テェケ、、、と人をあおるように音を発する。(妙に耳に残ります。)混沌とした中にも、活気に満ち溢れたこの街のパワーを垣間見る。ここだけ見てるとそれだけで圧倒されてしまうところだが、ふと脇道へ入ってみると地元のマーケットがあったりと、また違った趣を感じる。その先の方には急峻な坂道や階段があり、思わず路地裏の方にも足が向いていく。まるで何かに誘われるように不思議な世界に迷い込んでしまったようだった。海(港)と坂道という組合せに加えて、さらに異国情緒を感じさせるところは、どこか神戸や長崎にも通じるものがあるように思える。ほとんど全ての通りに広東語とイギリス風の名前が付いているのもまた興味深いものだった。
当てもなくさまよってしまったが、ふと我に返り、これからどうするかあらためて考えてみることにする。どんだけ歩いたのか、そもそも今どの辺りにいるのかすら怪しくなってきたので、とりあえず坂道を下って大きな通りまで戻ることにした。幸いにも地下鉄の上環駅近くに出てきたので、いちどホテルに戻って作戦を練り直そうと思う。地下鉄を乗り継いで九龍側へ渡り、ホテルの部屋で一息ついたときにはかなり汗をかいていた。まずは景色のいいところということで、基本(?)に立ち返り、ビクトリアピークの行き方を調べることにした。こんなことなら最初からこうすればよかったのかな?と振り返ってもどうしようもない。予定を組まないというのはこんなもんだろう、、、と自分を納得させ再出発に備える。本当はもっと遅くにチェックアウトするはずだったが、市内での航空機チェックインを利用して、さっさと身軽になっておくことにした。とにかく今夜は飛行機の中で一晩過ごすのは決定なので、部屋を引き払う前にシャワーを浴びて着替えは済ませてしまいたい。
あらためて地下鉄で香港島に渡り、エアポートエクスプレスの香港駅にある市内チェックインカウンターで今夜の便の搭乗手続きを済ませてしまうことにした。エアポートエクスプレスの利用者なら、空港まで行かなくても香港駅か九龍駅でチェックインできる非常に便利なサービスである。今夜分のついでにその先の日本へ帰国する便の手続きもできるようなので、荷物は最終目的地の成田で受け取るよう手配してもらう。バゲージには成田行きのタグを付けますけどこれでよいですね?とか、座席の希望は?とか、搭乗口は空港で確認してくださいねとか、異国の地(?)でありながら自然とやり取りしてる自分が不思議に思える。あっという間に用が済んでしまったが、自分でも知らないうちに経験値が上がってるようだ。さてと、ここからは隣接した中環駅を抜けて行けばいいはずなのだが、建物が大きすぎて方向感覚が怪しくなってくる。意に反して変な出口を出てしまったりと、すんなりいけてるのか、もたもたしてたのか、微妙になってきた。
ようやく見つけたJ2という出口を出ると、ちょっとした公園があり、どうにかこうにかその先にあるピークトラムを指す看板に気が付いた。それでもまだしばらくは坂道を登っていかなければならず、なかなか駅には到着できなかった。これから乗るピークトラムはビクトリアピークへ通じるケーブルカーで120年の歴史を持つと言われてる。乗り場の改札の手前には、昔の備品などが展示されていて、それなりに歴史があることを感じさせる。ここもオクトパスカードも使えるのだが、不運にも残高切れとなってしまい、現金を残しても仕方ないので窓口で往復チケットを買うことにした。夜景が見られる頃がもっとも混むとのことだったが、この時間帯は比較的すいている。浮かれ気味な様子の観光客の列に混じって待っていると、レトロな車両が山頂駅から下りてきた。早速中へ乗り込み出発を待つ。昔ながらの雰囲気を残したトラムは、どこか異国情緒漂う沿線をゆっくりと進んで行く。思ったよりも斜度はきつく、上向きに固定された座席に体がピタッと密着しているのがよく分かった。高度が上がり、木々の合間からちらっと遠くの景色が見えると小さな歓声が上がる。数分で頂上駅へ到着、早速絶景を見に行くことにしよう。
駅の上階は有料の展望台になっていたが、そちらのチケットは買ってなかったので建物の外へ出てみることにした。少し離れたところに適当な場所を見つけ、斜面にせり出した先へ行ってみると、ここからも十分景色を堪能することができた。もともとビクトリアピークは避暑地だったとも言われ、英国領時代に裕福な人が少しでも過ごしやすい気候を求めて開拓されたという。その足としてケーブルカーが敷かれたらしいのだが、観光地としてもなかなかいいロケーションにある。結果的にここも、弾丸ツアーの目玉には持ってこいの場所だったようだ。
一旦、中環に戻り、オクトパスカードにチャージしてから、トラムに乗ってみることにした。香港名物のトラムは香港島の繁華街を東西に結ぶ2階建て路面電車である。看板にぶつかるかのように走る姿は、香港らしい風景のひとつでもあり、実際に目にしてみるとちょっと嬉しかったりもした。(苦笑)特に目的地があるわけでもなかったが、傍から見ててもトラムは次から次へとやって来るようだし、何はともあれまず乗ってみることにした。乗り方も降り方もよく分からなかったが、前払いで2HK$出せばどこまでも行けるということだけは知っている。というか、オクトパスカードを持っているので、どうにでもなるはずだ。あまり深いことは気にせず、やって来たトラムに乗り込み2階席へ上ってみる。それほど座席数は多くないが見晴らしが利いて、ガタゴトゆっくり進む雰囲気は乗り物好きにはたまらない。特に停車駅が案内されるわけではないが、おおよそ数百メートルおきにある電停には律儀に停まっていくようだ。そんな感じで、しばらく街の様子を眺めていたが、何となく人が多く降りる場所で下車することにした。
トラムを降りた場所は金鐘近くの繁華街のようだったが、行く当てもないのでそのまま戻ることにした。反対側のトラムに再び乗り込み、先程と同じように2階席で流れる景色をぼんやり眺めていく。中環を過ぎたのを確認し、しばらく行ったあと適当に降りてみると、ちょうどうまい具合に、午前中にさまよってた上環駅のあたりにいることが分かった。わずかばかりだったが、これでトラムの体験乗車(?)を終えることにする。あとどうするか特に決めてなかったが、ちょっとだけやり残したような気分でもあったので、最後にもう少しだけ街歩きすることにした。再び地下鉄で九龍側に戻り、あたりをつけて旺角駅で下車すると、どこかチープでありながら怪しい匂いのする繁華街へと出てきた。狭い通りには、衣料品や小物などを扱った露店がひしめき合い、ちょうどここらが女人街と呼ばれる場所だということを認識する。とにかく、狭い路地は行き交う人で溢れかえっていた。微妙な値付けも然り、どうみても怪しいニセ者のようなものも決して少なくはないが、でも、見てるだけでそれはそれで楽しい。どれくらい街歩きしただろうか、まだまだ時間はあったので徘徊を続けてもよかったのだが、何となく日のあるうちに移動しておきたかったので、適当なところで切り上げて空港へ向かうことにした。(後日談:その後、トラムに乗る機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
午前中のときと同じように、スターフェリー行きのバスを探して乗り込む。フェリー乗り場に着いたところでバスを降りて、先程と同様にフェリーに乗り継ぐことにした。ウロウロしてるだけで今日もあっけなく時間が過ぎてしまったが、香港島の風景を見ながらビクトリアハーバーを渡って行く。名残惜しいところではあるが、これで香港の街を後にすることになった。これまで漢字圏の大都市で行った中でも、確かに香港は独特だったな…。映画とかでしか見たことのなかった風景を目の当たりにしてきたわけが、このパワーは一体どこから来るのだろう?そんなことを考えながら、薄暮の香港から機場快速で空港まで戻ってきた。
さて、戻ってきたはいいが、あとはやることがない。というのも次の移動は日付が変わってからのことで、出発は0時半の予定になっている。ちなみに夜行便を利用するのはインドの帰り以来の人生2度目のことになる。次のソウルには、当初立ち寄る予定はなかったのだが、チケットを組むうちに乗り継ぎがてら途中下車(?)することにしていた。空港に着いたあとはオクトパスカードを現金に戻すくらいしかやることがなく、とっとと出国手続きしてしまうことにしよう。こちらもアジアを代表するハブ空港と言われるだけあって、建物の大きさはもちろん、中に入るとお店の数の多さにも関心してしまった。香港らしいなと感じたのは、食を大事に考えているのかフードコートがとても充実してたことで、ちょっと小腹が空いてたこともあって軽く夕食をとっておく。その後、少しお土産を買い足したりしたあと、上海同様フリーのWi-Fiを利用してネットにつなげて時間をつぶすことにした。なるべく静かなところを探し電源のある席までやって来たものの、手持ちの電源アダプタではプラグの型が合わないことに気が付く。ここはひとつ勘をはたらかし、PCやスマートフォンを扱う免税店へ行ってみたら、やはり期待通り変換コネクタを売っていたのでそいつを買ってしまうことにした。
日記をアップしたり、今日さまよった場所を振り返ったりしてるうちに2時間、3時間はすぐに経ってしまった。きっと空港では時間をもてあますことになるだろうなと思ってたら、実際にはそんなことはなかった。24時間運用されてる空港だけあって、出発ロビーは常にどこかで人だかりができている。静かな場所を選んだはずだったが、周囲は出発を待つ人でごった返しており、立て続けに2、3便出発する様子だった。出発時間が徐々に近づき、搭乗口の番号を確認するついでに到着機の状況を検索してみると、昨日乗ってきた上海航空のFM811便が、なぜか今日は欠航していることが判明、もし1日違っていたら今頃路頭に迷ってたかもしれない、、、そう思うと少しぞっとする。さて、この旅3つ目のフライトは香港-仁川便で、アシアナ航空のOZ724便を予約してある。出発は0時半、機内への案内はちょうど0時からとアナウンスされている。そんな便、空いてるだろう、、、と高をくくっていたら予想に反してほぼ満席、予定のA330からなぜかB777-200にシップチェンジされていたが、座席は少々窮屈に感じた。そのOZ724便は定刻で香港を出発、1時間の時差はここで戻そうと頭の中を切り替える。そして、深夜の2時頃になって平気で食事が提供され、少々慌ただしい思いをすることになった。とりあえずいただけるものはいただくとして(苦笑)あとは眠れるだけ眠っておくことにしよう。窓の外は漆黒の闇、、、と思いきや、目を凝らしてみると雲の波が月明かりに照らされ、とても幻想的な眺めである。到着まであと1時間か、2時間かよく分からないが、熟睡はあまり期待できないかも…。
4日目
仁川空港にはほぼ予定通りに到着、十分寝れたのかそうでなかったのか、ぼんやりしていて自分でもはっきりしない。降機後、携帯の電源を入れると時刻は朝の5時をまわったところだった。弾丸の四日目、最後の訪問先はソウル、、、といってもほとんど乗り継ぎの状態に近い。とはいうものの帰りの便は17時の出発なのでソウル市内を往復しても、うまくすれば数時間はフリーな時間が取れそうである。いずれにせよ、空港の外には出たいので入国手続きを済ませることにしたが、とにかく香港に比べてぐっと気温が低いことが分かる。香港の最高気温が25℃だったのに対し、恐らくソウルは10℃に届くかどうかといったところだろう。とりあえず、手持ちのバッグに無理やり押し込んだ上着類を引っ張り出すところから始める。出発ロビーに行ってみても、まだ窓口も開いておらず、こんなひっそりとした光景も珍しい。外は真っ暗で世の中はまだ始動してない時間だったが、ここでじっとしてるのも退屈なので、何はともあれ移動してみることにした。
まだ6時になったばかりだったが、列車は既に動いていた。前回来たときは各駅タイプだったが、次のA’REXは速達便のようである。どこからやって来たのか、こんな時間からパシャパシャ写真を撮ってる輩がおり、よくよく見ると日本語のガイドブックを手にしている。あまり気にしないようにして車内で出発を待つことにした。このA’REXは、もうそろそろソウル駅まで開通してもいい時期だとは思うのだが、今日も金浦空港駅で地下鉄9号線に乗り継ぐことになる。(後日談:このおよそ1ヶ月後にソウル延伸が開業しました。)実はここでもまだどこで降りるか決めてなかったが、本当に何も思いつかなかったので、さらにもう1本乗り継いでそのソウル駅へ行ってみることにした。徐々に通勤時間帯へと差し掛かり、ソウル駅に到着したときにはすっかり夜は明けていた。外に出てみると空は晴れ渡り、ひんやりとした空気が寝覚めの頭を刺激する。GWに来たときはあまり気にせず素通りしてしまったのだが、現在のソウル駅に隣接する形で昔のソウル駅の建物が残っており、そちらにも足を向けてみることにした。今回の旅ではよほどお月さまと縁があるらしく、白っぽくなりかけた満月が建物の向こうに輝いている。古い駅舎跡は、ちょうどいま何やら工事をしている様子で、壁に昔の写真などが紹介されていた。くるっとひとまわりして駅の建物の中へと戻りひと息つく。KTXのダイヤを見ると大体20分おきに出発していて、とんぼ返りなら釜山も往復可能なのかな?などと分けのわからないことを考えながら、しばらくボーっとしていた。
地元の通勤客に入り混じって、とりあえず駅中のファーストフード店で少しだけ腹ごしらえしておくことにした。低い気温に体が慣れてないせいか、何気ない熱いコーヒーが妙に染み入る。総じて今回の弾丸ツアーでは段取りというものを準備してなかったが、ここソウルではひとつだけやっておこうと思っていることがある。それは前回、時間切れになってしまった国立中央博物館へ行って残りの展示物を見学しておくことで、特に半跏思惟像が見れなかったのが一番気に掛かっていた。なので、今回はぜひそれだけは成し遂げようと考えている。折角なので、博物館が開く9時ちょうどから見学できるように再び地下鉄で二村へ向かう。さすがに二度目とあって迷うことはない。見覚えのある大きな建物の前でしばし時間をつぶし、やがて開館時間になるとすかさず3階へ向かった。当然ながらこんな時間にここへやって来る人の姿はなく、お目当ての半跏思惟像と対面を果たした後、贅沢にもひとり独占して見学することができた。
引続き、前回見学してなかった展示物を中心に見てまわり、適当なところで国立中央博物館を後にした。駅に戻る道すがら、これから博物館に向かう学生さんの団体などとすれ違う。香港では賑やかなところ中心にまわっていたので、今日はどこか落ち着いたところでもと思い、とりあえず候補にあがったのが仁寺洞(インサドン)だったが、あまりにも天気がよかったので急遽行先を変更、63ビルという超高層ビルに向かうことにした。それとなく行き方は知っていたので、地下鉄を乗り継いでヨイナル駅へ向かう。そこまで行けば何とかなると想像していたが、実際降り立ってみるとポツンとある高いビルまでは意外と距離がありそうだった。大きな建物なので目標物としては非常に分かりやすかったのだが、結局15分くらい歩いてしまっただろうか。ようやくたどり着いたところで、早速展望階へ行ってみることにしよう。
漢江側にあるシースルーエレベータを昇っていき、最上階へとやってきた。一応、最上階はアートギャラリーという扱いになっておりピカソの絵が展示されていたのだが、やはり景色を堪能しておきたい。日本を出発してから昨日まで、比較的天気には恵まれたが今日も本当にいい天気で視界は良好、遠くまで見渡せる。前回のGWではNソウルタワーへ登ってみたが、今日のこの景色もまた格別だ。思わず時間を忘れそうなったが、ソウルの絶景を満喫したところで、とりあえず仁寺洞にも足を延ばすことにした。来たときと同様、漢江沿いの道をとぼとぼと歩いてヨイナル駅まで戻り、地下鉄を乗り継いで鐘路3街駅を目指す。
駅から地上に上がってくると、ソウルの中心部へやって来たなという感じがした。仁寺洞もまたソウルらしいところだといわれているが、南大門市場や明洞のような繁華街とは様子が違い、落ち着いた街並みからは、また異なった雰囲気を感じ取ることができる。特に目的があったわけでもなかったが、しばらく通り沿いのお店などを眺めながらプラプラと街歩きすることになった。
思ったより効率よくまわれた分、少々歩き疲れた感じもしたので、名残惜しいがこれでソウルの街をあとにする。帰りも地下鉄とA’REXを乗り継いで仁川空港へと移動していく。搭乗手続きは済ませてあるので空港到着後はすぐに出国手続きをして、その後最後の締めとして軽くコリアンスタイルで遅めのお昼とした。食事を終えてフードコートを出てくると、気のせいか少しあたりがざわついている様子だった。ロビーのTVはどれもニュース速報らしきものを流していており、場所によっては空港職員も入り混じって人だかりができている。残念ながら喋ってる言葉が理解できないので何を伝えているのかはっきりしなかったが、ある島でもくもくと上がる煙を映像は映し出していた。見入ってる人々の怪訝そうな表情が気になり、ネットが使えるコナーでPCを開き日本のニュースサイトを見てみると、この空港からさほど離れてない場所で襲撃事件が起きてたことが分かった。(後日談:日本でも報道されてた通り、この日の14時頃、北による軍事攻撃があったことをニュースは伝えていました。もしかしたら、のんびりお昼を食べてる場合じゃなかったのかもしれませんが、今回もまた不思議なめぐり合わせとなったようです。)
搭乗時刻が近づく頃になると、日は徐々に西に傾きかけていた。四日間の弾丸ツアーも終わってしまえば、あっという間だ。あとはもう帰国するだけだったが、羽田便が取れなかったのでこれから成田へ向けて出発する。もっとも、羽田便だとしたら金浦空港へ行かなければならなず、多分仁川での荷物のスルーはできなかったので、結果的に成田便でよかったのかもしれない。帰りの便もアシアナ航空を予約しており、出発は17時の予定となっている。目の前でスタンバってる機材を見ると、B772からジャンボ機(B747)に変更されていた。帰りのOZ106便もほぼ満席で、上海航空の便を除けばどれもいっぱいだったことになる。実際乗り込んでみると、B772に比べて気持だけシートピッチが広かったようにも感じた。最後のフライトも特に遅れはなく、わずか2時間程度だったが、食事も提供され、熟睡するヒマもなくすぐに成田到着となった。ところで、ソウルにいたときはあまり身につまされた感じはなかったが、成田で飛行機を降りてみると、入国手続き前だというのにいきなり取材の報道陣が待ち構えており、徐々に事の重大さを理解することになった。ちなみに、フジTVのインタビューを受けてる人のすぐ後ろを、うかつにも横切ってしまい、もしVが使われようなことあれば見切れてた可能性がある。最後のオチはまったくの想定外だったが、3泊4日のアジア弾丸ツアーは無事締めくくりを迎えることとなった。