■旅日誌
[2009/9] 世界で最も美しく華やかな街~杭州
(記:2009/11/29 改:2015/11/1)
(記:2009/11/29 改:2015/11/1)
今年は日付の並びから9月にも大型連休が発生し、いつしかシルバーウィークと呼ばれるようになった。最大で5日間のお休みとなるわけですが、当初何も考えてなかったところへ急にお誘いを受けて3泊4日で中国の杭州へ出掛けることにしました。杭州を訪れるのは2回目ですが、3日目にはCRH(和諧号)に乗って日帰りで上海まで足を延ばしてきました。
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その1・杭州
前回杭州へやって来たのは会社の出張でのことだったが、1日フリーな時間があったので、許された時間の中でそれなりに見てまわったことがある。今回は本当に直前になって決めたので、準備もおぼつかず旅立つことになってしまった。まぁ、それもいつものことと言ってしまえばそれまでだが、急過ぎたので行きは成田からの直行便が取れず、関空でのトランジットとなった。何だかんだで今年海外に出るのも3度目とは、かなりのハイペースかな、、、さて、行き当たりばったりだが、どうなることやら…。
まずは羽田から関空へ向うために、朝6時半出発というとんでもない便に乗らなければならない。恐らく、羽田出発の最早記録のような気がする。それこそ寝坊したら大変なことになるのでこの日は必死に起きたが、成田出発でも早い時間帯だったら同じように早起きしてたかもしれない。いずれにせよ、この慌しさはできれば避けたいところかな…。先日の南紀白浜のときには、今日こうして再び飛行機に乗るなんて思いもよらなかったが、関空行きの便にあてがわれてたのは定員少なめの機材であるMD90で、実際に乗ってみると関空から海外へ向かうJALのクルーが後方にずらっと陣取っており、座席はほぼ満席だった。
関空での乗換えは思ったよりスムーズだった。時間に余裕があれば、このルートもありかもしれない。出国手続きを済ませ、ラウンジに入ったところでようやく落ち着いた感じがした。関空から杭州まではおよそ2時間半、当たり前だが成田発に比べればかなり近く感られる。ちなみにこの日使われてた機材はJEXのB737-800で、名目上はJAL便として飛んでいる。しかし、JALの経営問題の影響で杭州から撤退することがつい先日発表されたように、連休直前でも座席が取れたというのは単に運がよかったというよりも、それだけ利用者が少ないという表れかもしれない。少々複雑な思いである。
前に来たときは仕事を出す側としての立場だったので、それなりに相手をしてもらったが、今回は完全な個人旅行なのですべて段取らなければならない。(余談:そのときの旅日誌はこちらです。)ここ杭州は、北京などと違い大都市というイメージはないが、でも中国の社会の中では都会の部類に入るように思う。街中は大きなビルが建ち並び、大規模なショッピングセンターも多くあり、道もそれなりに整備されていて交通量も多い。市街近郊には新興の集合住宅やオフィス向けの高層ビルが次々と建設され、また工業団地のようなものもあちこち点在している。そういう意味ではいまの中国の勢いを感じることのできる場所のひとつかもしれない。
一方で杭州と言えば、やはり観光色の強い風光明媚な場所というイメージがある。マルコポーロが世界で一番美しいところと称えたのもうなずける。例えば、杭州のランドマークでもある西湖のまわりを散策してみれば、そのことがよく分かる。前にも書いた通り、日本人でもさほどストレスなく生活できそうな環境だし、もしかしたらこっちの方が性に合うのではないか?と感じる人もいるかもしれない。あと1日くらいあれば、もっと自由に歩きまわってみることもできたが、ホテルの周囲にも大きなショッピングセンターや若者で賑わう繁華街もあり、ちょっとした買い物なら不自由することはない。ただ、台湾や日本のようにコンビニの類はほとんどなく、とりあえず町の酒屋さんのようなところで水とお茶が買えることは真っ先に確かめてあった。それから、マクドナルドとケンタッキーの看板は方々で見られるので、食事に困ってひもじい思いをすることはまずない。まぁ、今回は食事のことは二の次にして…という気持ちもあり、ファーストフードで十分、その分時間を有効に使おうと割り切っていた。(余談:折角なので1回だけは夕食を奮発して中華を楽しみましたが…。)逆に前回意識してなかったこととしては、街中を走る路線バスの種類が多く感じたことで、タクシーも走っているけど捕まるのか捕まらないのかよく分からないし、バスはうまく乗りこなせれば便利な乗り物になるなと思っていた。ちなみにバスの運賃はかなり安く、2両編成の快速バスや一部にはトロリーバスも走っていた。それと地下鉄の工事をやってるところもあり益々便利になっていくようだった。
滞在初日は杭州蕭山国際空港へ到着したところで、すぐにリムジンバスに乗り継ぎ、市内中心部まで向かった。バスに乗ってる時間は1時間もかからないので、そんなに遠い方ではない。それよりも、どこもそうだが日本とは比べものにならないほど運賃は安いのには驚く。でも、乗り心地は決していいものではなく、高速道路をひたすら進むとしばらくして遠くに都会のシルエットが見えてくる。大きな河を渡り、ごちゃごちゃっとしたところに差し掛かると、杭州の中心部はもう間もなくだ。予約を入れたホテルは、たまたまリムジンバスの終点近くにあり、歩いて行けるところだった。別にケチったわけではないが、超高級ホテルとも違うし、かといって悪いというわけでもない。一応評価は4つ星だったので、まぁそれ相応といったところだろうか。しかし、何となく外人向けというよりも国内の人の方が多かったようだ。実際フロントでも、英語がどこまで通じてたか、怪しい雰囲気ではあった。
とりあえず無事に着いたので、ホテルにチェックインした後で杭州のランドマークである西湖の近くまで出て行ってみることにした。それともうひとつ、杭州駅へ行ってみて、明後日の上海行きのチケットを買っておくことは、初日にやっておきたいことのひとつだった。もちろん列車の切符の買い方などよく分かってるはずもなく、とりあえず行きと帰りの列車の番号と時刻を紙にメモって駅へ持って行ったが、意外とすんなりを買うことができてしまった。ただ、困ったことがひとつ、駅からホテルまでどうやって帰ればいいのか、どのバスに乗ればいいのかがなかなか分からず、これには少々てこずってしまった。
2日目は杭州近辺でいくつかまわってみることにしている。杭州は観光都市とはいえ北京のような大都市とは違い、基本的に地方の都市なので、時折、外国人にとってはちょっと不便に感じることがある。でもその多少の不便さが旅をしていることを実感するわけでもある。今日も移動の足はバスが中心で、少々冒険が必要になってくるかもしれない。最初に向かったのは霊隠寺で、ここは前回も来た場所なので、比較的すんなり到着することができた。さて、このお寺だが、なかなか文章では説明しづらいのだが、お寺好きや仏様好き(?)にはたまらないかもしれない。確かに観光スポットであることには違いはないが、中国全土から信心深い人が参拝に訪れる場所でもあり、単に観光するだけというのともちょっと違う意味もあるようである。西欧系などのぱっとみ外人と分かる観光客の数は少なく、その意味では北京などにいるのとはまったく違う。霊隠寺は中国禅宗十刹のひとつに数えられ、インドの高僧によって建立された。西暦で言うと確か300年頃の開山だったので、非常に歴史は長い。境内の中に入ると、重厚で立派な建物が幾重にも配置され、中の大仏の迫力や色鮮やか名な色彩にはかなり圧倒される。また、このお寺の前にあるという岩山には崖面に彫られた石仏が何百体もあり、そちらも見逃せない。とにかく、杭州へ来たからにはここは外せないスポットのようだ。
次に西湖のほとりまで戻って岳王廟(岳廟)というところへ寄ってみた。ここは南宋時代の将軍岳飛という武将を祀った廟であり、いまでも人々の信望が厚いことがうかがえる。お墓のの様式や門番をする守り神の並びについては、北京で明の十三陵を見学したときに教わったことを覚えていたので、その意味などを理解することができた。こんなところで知識がつながるとは思わなかった。そんな感じでしばし歴史のお勉強をしたあと、簡単にお昼を済ませ、再び西湖のほとりへ出て午後どうするかあらためて考えてみた。
再度路線バスにチャレンジして、西湖の南岸にある雷峰塔へ向かうことにした。この塔は実は最近になって建てられたもので、遠目には中国様式の美しい姿が目を惹くが、いざ近寄ってみると大きな近代的な建物にしか見えず、人によっては興ざめするかもしれない。崩れ落ちてしまったかつての塔の跡も保存されているのだが、エレベータやエスカレータが完備され高い入館料をとって維持されているのがよく分かった。とはいえ、ここまで来たので一応登ってみると西湖全体を見渡すことができる格好のスポットには違いなく、絶景を見るための場所と割り切ればそれなりに楽しめるのではないだろうか。
ここで一旦西湖を後にして少し離れた場所へ移動することにした。次の目的地まで行けそうなバスをあらためて探し雷峰塔の向かいにあるバス停へ向かう。この辺りは前回も送り迎えの車で通ったところなので何となく覚えている。丘陵地帯を抜けると銭塘江沿いに視界が開け、すぐ目の前に六和塔が姿をあらわす。銭塘江は満潮時の逆流でも有名なところだが、江南地方の雄大な景色を体感することができる。この塔の名前にもなってる六和とは仏教の教えにもなっている6つの戒めを指すという。早速塔に登ってみることにしよう。外面には13層に見えるけど中は7階建てという不思議なつくりをしている。高さは60メートルもあるので、のぼるだけでひと苦労だが、その後に待っていた絶景はまた素晴らしいものだった。
折角杭州まで来たので、龍井茶の産地などにも行ってみたかったが、時間がなくなってきたので、最後に河坊街へ行ってみることにした。ここも前回少しだけ立ち寄ったことがあったが、それっぽい雰囲気のする中国らしい古い町並みを感じ取ることができる。特に目的もなく町歩きするにはちょうどいい場所なのかもしれない。こうして2日目はひたすら観光して歩きまわることとなった。
杭州からの帰りには成田までの直行便が取れており、出発時間はお昼をまわったあたりだった。どうしても飛行機の時間には合わせなければならないので、残念ながら最終日は特に何もすることができなかった。空港までは再びリムジンバスでの移動となったが、行きよりは少しマシなバスだったかもしれない。わずか2、3日の滞在ではあったが、杭州は北京や上海とはまた違った雰囲気なのをあらためて認識する機会となった。でも、GDP2桁で成長を続ける国であることには変わりなく、そういう意味ではやはり中国のパワーというものは十分感じとれた。ちょっと私見が入るが、10年も実質成長が止まった国とでは勢いがまったく違うと思う。いまでも「そう言ったって、中国なんて…」ていう言う人がまだまだ日本には多いようだが、それは間違った先入観で、ちょうど現地のTVでも日本の政権交代のニュースを繰り返し見ることになったが、その差は歴然としているのがイヤでもよく分かった。
その2・上海
3日目には日帰りでCRHに乗って上海まで足を延ばすことにした。海外で地下鉄以外の鉄道に乗るのは、台湾以来2度目のことになる。ここでいうCRHとは、直訳すると中国高速鉄道、日本でいったら新幹線に相当する。この高速鉄道には「和諧号」という愛称が付けられており、一般的な列車をあらわす「火車」と区別するために「動車組」という表現が使われることもある。今日利用するCRHは、中国にいくつかあるうちの上海南駅と杭州駅間を結ぶ路線である。当初はJR東日本のはやてをベースにした車両=CRH2を期待していたのだが、残念ながら行き帰りともボンバルディア製のCRH1だった。慣れてる分台湾新幹線の700T型にはまったく違和感を感じなかったが、このCRH1は、どこか異国の地の鉄道に乗ってる気分にさせれくれたような気がする。日本のはやてに比べると、車内サービスはまぁまぁそこそこ、でも居住性というか座ってるときの感触は日本の新幹線の方に分があるようにも思えた。ちなみに行きは一等座(軟座=商務席、グリーン車)が満席だったので二等座(硬座=普通席)にして、 帰りは一等座を利用してみた。海外で鉄道を利用してみると分かるのだが、杭州駅のように大きな駅だと特にセキュリティチェックは厳しい。駅の中の構造も大きなコンコースあり、待合室ありで、無料でミネラルウォーターが配られたり、まるで空港にいるような感じがしてくる。この上海と杭州を結ぶ路線は、新幹線というより在来線に高速特急を走らせてるようなものらしく、実際、貨物列車や在来線ともしょっちゅうすれ違った。ベースが在来線なので最高時速も170キロ程度とやや抑え気味で、ちょっともの足りなかった気もする。もしこの先機会があるなら今度は上海-南京とか、北京-天津とか乗ってみたいものだ。(後日談:その後、広州でCRH1に乗る機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
ところで、この日の天気はあいにくの雨、雨、雨、CRHが到着する上海南駅からは地下鉄を乗り継いでいく。とりあえず、南京東路駅で地下鉄をおりて南京路に出てみることにした。やっぱり外は雨が降っていて、高い建物のてっぺんは何となくかすんで見える。足元が悪い中、少し歩いて外灘(ワイタン)まで行ってみたものの、上海らしい風景もあまりぱっとしない。万博前で工事真っ只中だということは分かっていたので、まぁ文句を言っても始まらない。まぁ、次また来ればいいだけのこと…とでもしておく。この先もあまり予定は立ててないので、何となく豫園あたりにでも行ってみることにした。平日ではあったが、それなりに人出はあり、観光地っぽいところを少しウロウロしてみた。(後日談:その後、あらためて上海へ来る機会がありました。再訪したときの旅日誌はこちらとこちらをご覧ください。)
北京の五輪前もそうだったように、いまの上海は万博前で街中が工事でガタガタしてるところかもしれない。多分1、2年後に来ればぐっと印象も違ってくると思う。(後日談:再訪したときの旅日誌はこちらをご覧ください。)話に聞くと地下鉄の路線も一気に整備されたようで、とても便利な感じがした。今日はあまり具体的な予定を立てずに何となく適当に街並みなど見ながらウロウロしているが、北京とも違うどこか自由な空気が感じられる。こうして慣れないところではあったが、地下鉄、バス、タクシーとチャレンジしてみたが、やれば何とかなるみたいだな…。
最後に少し落ち着いたところでもないかと思い、魯迅記念館へ行ってみることにした。ここまで寄ってきたところはどこも浮き足立ったようなところばかりだったので、ここはひとつ趣を変えてみようと思う。記念館は住宅街のような普通に人々が暮らす閑静な公園にあり、また違った上海の一面を見たような気がする。この記念館は日本人の訪問者も多いと聞いていたが、魯迅にまつわるものはもちろん、当時の歴史を知ることのできる貴重な資料も数多く展示されていた。特に先の戦争に関するものについては、非常に考えさせられるものがあったような気がする。例えば昭和20年8月15日の日本の新聞が展示されてるのを目の当たりにすると、平和ボケしてしまった日本人の一番痛いところを突かれたような気がして、深く考えさせられてしまった。偶然だったとはいえ、今回ここへ立ち寄れたのは、ある意味幸運だったかもしれない。ちょうど閉館時間となり、魯迅記念館を出て、近くの落ち着いた街並みを歩いていくことにした。
今日は天気も悪かったので、どこか薄暗くとても日が短く感じらたが、最後に上海站へ行ってみることにした。杭州からのCRHの発着点となる上海南駅とは少し距離がある。なので、表玄関である上海站もぜひ見ておきたいと思っていた。地下鉄を乗り継いで上海火車站で下車し、しばらく地下道を歩いていて上海站にたどり着く。外へ出てあらためて駅の姿を見渡すと、スケールのでかさは相変わらずで、とにかく圧倒される。上海での一日もあっという間だったが、やはり万博後にもう一度来てみないといけないようだ。(後日談:ちなみに上海南駅ですが、こちらはこちらでえらくドデカイ姿をしていました。建物のデザインもユニークですが、これから超大型のショッピングモールも開業するようでしたし、とにかく大陸スケールにはあっけにとられるばかりでした。なお、CRHの始発駅は上海虹橋空港近くに集約されることになりました。)