■旅日誌
[2009/5] 三陸リアス探訪
(記:2009/7/11)
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一泊二日で三陸地方をまわってきました。海岸の景色としては日本で一番美しいといわれる北山崎、これまた日本一の透明度を誇る龍泉洞、そして極楽浄土にもたとえられる浄土ヶ浜と風光明媚なところをまとめて訪問してきています。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
さんりくトレイン北山崎、田野畑、北山崎、龍泉洞
今回まわろうとしてる場所は、もう何年も前から行きたいと思ってたところで、ようやく実現したな、という思いが強かった。一泊二日でも十分まわれるだろうと考えていたが、いざ行程を組んでみるとどうもうまくいかない。失礼ながらそれほど不便な場所ということになるのだが、やはり公共交通だけじゃ無理?と諦めつつもどうにかつながりそうな筋を探してみた。はやてから盛岡でさんりくトレイン北山崎に乗り継いでいくとお昼過ぎには浄土ヶ浜までやってくることができる。ここから岩泉まで戻る感じに移動しておいて、翌日午前で龍泉洞、午後に北山崎に寄ったあと八戸へまわりると東京まで十分に戻ってこれるようである。このルートだと東の秘境線の横綱=岩泉線にも乗るチャンスもあるので、とりあえずこれで行くことにした。
さんりくトレイン北山崎
出発の2、3日前、一応ルートのおさらいしてみたところ、なんとこの時期は北山崎を往復するバスが日曜運休することが判明、ということで一から段取りを組み直さなければならなくなってしまった。あれだけ苦労して導き出した筋なので、そう簡単に代替案が出てくるとも思えないが、何かひとつ犠牲にすればつながることは分かる。でもなぁ、さて困ったぞ…。それでも諦めずに目の前のパズルと格闘してみると、1ヶ所だけ"飛道具"を使うことにより答えが導きそうである。詳しいことはまた後述するとして、これ以外に方法はないと覚悟を決めることにした。
山田線・区界
まず初日、7時直前のはやてで東京駅を出発、とりあえず一気に盛岡へ向かう。新白河のときよりもずっと早い時間である。その盛岡からは土日を中心に運転される臨時快速さんりくトレイン北山崎号に乗り継ぎ山田線を行く。夏休みやGWなどの多客期には立客も出るそうだが、オフシーズンということもあり、指定を取ってなくても全然余裕である。だが今回は、人が少ないことを逆手にとって展望席でも一番いい席を押さえておいた。というわけで、運転手の真後ろのかぶりつき席(1A席)を占有することになった。この列車に使われるKenji編成去年の秋にも利用したことがあったが、普通乗車券だけで乗れるとても乗り得感のある列車である。あとひとつ、この列車のために準備された特製のお弁当も楽しみのひとつで、事前予約してなくても最初の停車駅である区界駅に着くまでに車掌に申し出れば宮古で受け取ることができる。というわけで、車内にあった申込書に名前を記入して、検札に来たところでそれを提出した。
さんりくトレイン北山崎
区界駅で上下交換のためしばらく停車、その間を利用して近所にある道の駅から地元産品などの販売が駅舎の中で行われていた。山間の寂しいところだが、しっかりとしたつくりがまたノスタルチックでいい雰囲気である。とにかく山田線山深いところが多く、どこか心癒される景色が連続していた。ただ、ひとつ残念だったのは北上山地の最高峰である早池峰山の姿が見えなかったこと、、、この先での天候の回復を期待したいところではある。列車は茂市へ到着、折り返しの宮古まではあともう少しである。
さんりくトレイン北山崎
宮古駅のホームでお弁当を受け取り、再び列車に乗り込む。当初は浄土ヶ浜へ向かう予定だったが、前出の通り行程を組み替えたのでこのままさんりくトレインに乗って北リアス線を北上することにする。進行方向が逆になり、ここから全車自由席になるのだが、何となくいままでの席に座り続け、後ろに流れている景色を眺めながらお昼にすることにした。早速ふたを開けると、地のものが2段重ねの中にぎっしり詰まっていた。値段は1700円と少々お高いが、十分それに見合う内容だった。ついでにいうと、車内にあるクーポン券を利用すれば沿線の施設が割引きになるので、それと差し引きするとそれほど高いとも言えないかもしれない。
北山崎
列車は快調に飛ばし、田野畑駅で下車することにした。第一の目的地である北山崎のアクセス駅なのだが、数キロ以上はなれているため歩いていくのは少々難しいものがある。とりあえず村民バスが出ているのだが、これが1~2時間に1本とかなり寂しいものがある。タクシーを使うにもどう呼び出していいかわからずいきなり1時間待ちになってしまい、実のところ1本あとの便でもよかったが、列車の形をした水門などを見学しながら適当に時間をつぶす。明日になってしまうと終日なので、これでもよしと考えないといけないのだろうか。ようやくやって来たバスに乗って海岸沿いの山道を進んでいくことになった。
北山崎
終点でバスを降りると、きれいに整備された遊歩道が先の方へと続いていた。それなりにお土産屋さんもあるようだが、歩いている人はほとんどいない。シーズンオフだからだろうか、まぁ静かな方がいいか…。それほど歩かずに第一展望台へ到着、早速南側へ目を向けると写真でみた風景とまったく同じ光景が広がっていた。うわぁ~これはすごいぞ、、、さらに先にある第二展望台へ行くとより迫力が増すということなので、すぐさま先へ進むことにした。アップダウンが連続する歩道は最近整備されたとのことで、とても歩きやすかった。途中には波打ち際まで一気に降りれる分岐点があるのだが、落石注意のお知らせとともにそちらは閉鎖されていた。もっとも700段以上の石段が待っているので、多分そちらには行かなかったと思うけど…。さぁ、あともう少しで第二展望台だ。
北山崎・野生の熊に遭遇
10分ほど歩いて第二展望台へ到着、それこそ、だぁ~れもいない展望台を独り占めして雄大な風景を満喫することになった。いやぁ~うわさには聞いていたがこれは素晴らしい!ここから先8キロ近く断崖絶壁が続いているとのことで、リアス式海岸であることをもっとも実感できる場所である。ここからみた景色は日本でも特A級のランク付けがされているという。天気はあまりよくなかったが、雨が降りそうなほどでもなく、また風もほとんど吹いてなかったのでとても快適に感じた。遠くから聞こえてくる波の音と、海鳥の鳴き声だけが聞こえるだけで、時間が経つのも忘れただただボーっとするには最高の場所だった。こんな素晴らしい場所ならもっと早くに来るべきだったな…。30分ほどいただろうか、何となく人が来たところでこの場所を後にすることにした。
三陸鉄道・北リアス線
先ほど歩いてきた遊歩道をそのまま戻るだけなのだが、藪の中で何か黒いものがゴソゴソと動く気配がしたので気をつけて見てみると、なんと野生の熊に出くわしてしまった。あまりのことにどうしていいか分からず、とっさにとった行動は、なぜかポケットにあったデジカメを取り出して写真を取ることだった。人間こういうときは何をするか分からない。(苦笑)どうもの方も驚いた様子で、「グォーー」と低い唸り声を上げてこちらに向かってくる素振りをみせたこともあり、びびってピンボケした写真を撮るのが精一杯だった。とりあえず静かにこの場はから離れることだけ考え、ゆっくりゆっくり向こうを刺激しないようにしてすぐ脇を歩いて逃げてきた。第一展望台まで戻り、が出たことを近くにいた人にも知らせて、一応お土産屋にも伝えておくことにした。お店の人もびっくりした様子だったが、とんでもない方向からもう一度熊があらわれ、ちょっと騒然とした雰囲気になってしまった。お店の人の話よると、時たまは出てくるらしいが、それでも珍しいのとことだった。いやぁ、今回もまた思わぬサプライズに遭遇してしまった。(苦笑)
龍泉洞
再び村民バスに乗って田野畑へ戻ってきた。偶然にもちょうど上りのさんりくトレイン北山崎号に接続する格好となり、小本まで移動する。小本駅からは龍泉洞までバスが出ているのだが、うまく接続が取れずここで"飛び道具"の登場となる。実はおととい宿の方に相談してみたところ送迎の車を出していただけるとのことだったので、それに乗せてもらって龍泉洞まで行くことにした。そうすることにより、今日のうちに龍泉洞を見学する時間が取れるようになる。バスを待っていると見学できる時間がほとんどなくなってしまい、小本で降りずに宮古から茂市をまわったりするともっと遅い時間になってしまう。というわけでここでショートカットする…というのがパズルの答えだった。
龍泉洞
とりあえず、宿でチェックインを済ませ遊歩道を歩いて、龍泉洞に向かうことにした。いまさらここで説明するまでもないが、龍泉洞といえば日本でも屈指の鍾乳洞であり、世界一の透明度を誇る地底湖があるところとして有名なところである。ここも一度でいいから見ておきたいと思ってた場所だったが、少々交通の便も悪いということで、なかなか来ることのできない土地だった。その龍泉洞に到着、さんりくトレイン北山崎号にあったクーポン券を使ってチケットを買い、ついでにミネラルウォーターも引き換えてもらう。洞窟の中に入ると鍾乳洞独特の高湿でありながらヒヤッとした空気を感じる。まだ暗いところに目が慣れてないせいもあり、縦長状の通路を恐る恐る進んでいく。鍾乳洞の奥から湧き出る水は川のように大きな流れとなって足元を流れていた。さらに何十メートルか進むと鍾乳石など不思議な光景が姿を現してくる。テクニックも持ち合わせてなかったのでコンデジではうまく写真が撮れなかったが、珍しい光景をいくつも目にすることができた。
龍泉洞
第一地底湖が姿をあらわし、怪しげな青い光を頼りに底の方を覗き込む。どこまでも透けて見えているのがまた不気味で、吸い込まれそうな感覚に陥る。狭い空間をさらに奥へと進むと一般の見学者が入れる一番奥にある第三地底湖へとたどり着く。見学用に組まれた足場はどこか落ち着かず、あらためての中を覗き込むと本当に底なしといった感じで、この感覚はいままで経験のしたことのないものだった。暗さと不思議な静けさのせいか、こうしているとより一層不気味さが増してきて、一人でいるとちょっとした恐怖心のようなものも覚え始めていた。さてと、それじゃ引き返すことにしよう。帰路は上りの急階段になっており頭上を気をつけながら登っていくと三原峠というとこに行き着き、見学路の中でも一番高いところから、あらためて地底湖を見下ろすことができる。ここは日本でも屈指の鍾乳洞だと言われているが、洞窟に興味のない人でも見学しておくべきだと思う。意外と長居ししまったようだったが、残った時間で通りの向こうにある新洞を見学して今日を締めくくることにした。毎度のことながら、本当にいいものを見せてもらった。
龍泉洞
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
岩泉線、宮古、浄土ヶ浜、三陸鉄道北リアス線、八戸線
翌朝も宿の車で岩泉駅まで送ってもらい、そこから朝一の列車宮古へと向かう。朝一の便といっても、朝8時に1本と夕方から夜にかけて2本しかこのには列車がやってこないので、これを逃すと大変なことになる。(笑)相変わらずすごいダイヤだこと。ところで、岩泉線に乗るのは2度目となるが、前回はただ乗りつぶしのために往復しただけで、それも途中で日が落ちてしまい、本当に「乗った」という事実が欲しいだけだった。あのときキハ52に乗れたのが唯一の思い出といったところで、いまでは高性能の車両に置き換わってしまい、ちょっと味気ない気もする。こんなに広かったかなぁ?などと思いながら、の中を眺めてるうちに、、折り返しの列車が入ってきた。数名の人が降りたあと、やはり数名の客が乗り込み列車岩泉駅を出発した。
岩泉
一年の中でもいまが一番緑が映える時期だと思う。今日の天気予報は曇りから雨ということだったたが、時折太陽が顔をのぞかせていた。列車はエンジンの唸りを上げながら秘境度満点のところを走っていく。岩泉線はとっくに廃止されていてもおかしくない路線なのだが、並行する道路が整備できないなどの理由でいまでも存続しているらしい。特に押角峠を越えるあたりは最大の難所であもり、よくもまぁ、こんなところに路線を敷いたものだと感心してしまう。途中駅で人の入れ替えはほとんどなく茂市までやってきた。山田線と合流したあとは昨日通ったところを再び走っていくことになる。やがて宮古へ到着、時間にして1時間とちょっとだったが、かなり密度の濃い時間だった。
岩泉線・岩泉駅
宮古から次の目的地である浄土ヶ浜へは路線バスを使って移動する。それほど大きくないバスは住宅街の中を通り、これから観光地へ向かうという感じがまったくしない。港の近くを抜け、アップダウンのきつい山道を登ると観光船のターミナル近くのバス停があり、ここからは一般車の乗り入れが制限されている。さらに進んでいくといきなり絶景が目に飛び込んできた。奥浄土ヶ浜バスを降り、次のバスが来るまでの1時間であたりを散策することにした。浄土ヶ浜は、その昔、地元の高僧が「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことに由来するという。白い砂浜に聳え立つ奇岩は、まさに絶景であり、写真で見るより本物の方が何十倍も迫力があった。
岩泉線
壁のような大岩に近づき、少しだけ外海を覗きに行ってみたが、足場は悪く遠くから眺めた方がいいかもしれない。まだ少し時間があるので、湾沿いの遊歩道を歩いて、ちょっと高台にある御台場展望台へ行ってみることにした。そこから見下ろす眺めもまた違った感じがして、しばらく静かな湾を眺めていた。その後、来た道をもどり、最後にバス停近くで何もせずに時間を過ごすことになった。たった1時間だったが、これで浄土ヶ浜を引き上げていく。帰りもまた路線バスを利用して宮古駅まで戻ることにした。今回予定していたところはすべてまわったので、あとは東京まで帰らなければならない。距離的には行きと同じルートを使った方がいいのだが、八戸を回った方がつなぎがよかったので、思い切ってさらに北上することにしていた。あらためて時計をみるとちょうど正午、別に狙ったわけではないが、昨日ここまで乗って来たさんりくトレイン北山崎号がやってくるタイミングである。そんなわけで2日続けてこいつに乗ることになってしまった。
浄土ヶ浜
三陸鉄道宮古駅JRの駅舎から少し離れており、そちらの改札から列車へ乗り込むことになる。切符を買い求めている途中、偶然にもあの有名なウニ弁当を発見、久慈駅で限定20食の販売だったような気がするが、ここ宮古駅にも先着3食限定ということで売られてるらしい。このタイミングでもまだ売っていたので迷わずこいつを購入、これから車内で堪能することにしよう。宮古駅特製弁当を引き換えにくる人を横目に見ながら列車へ乗り込む。さんりくトレイン北山崎号はこの先全車自由席となり、進行方向も前後入れ替わる。昨日と同様、思い切って運転手の真後ろの1A席へ向かうと、たまたま空いていたので、今日も最前列の特等席を占有することにした。2日続けてのKenji編成にも十分馴染んできたようで、より一層居心地よくなっていた。そんな感じで早速、例の弁当を開く。これでもかというほど蒸したウニがぎっしりと敷き詰めているのだが、漬物とレモンが添えてあるだけのとてもシンプルなつくりである。よくみるとご飯の中にもふんだんにウニが使われており、いやぁこんな贅沢なお弁当にはなかなかお目にかかれないと思った。
浄土ヶ浜
北リアス線のつくりとしては、地形を無視してトンネルと高架で直線に近い線形になっているところが多い。なので、ずっと海沿いの美しい景色を行くわけではないが、それでも数少ないビューポイントでは減速してサービスしてくれる演出もある。さんりくトレイン北山崎は快調に飛ばし北上し続けてきたが、途中から雨にたたられるようになってしまった。普代の駅で、どっと団体さんが乗り込んでくると一気に賑やかになる。展望席に乗り込んできた人たちは、口々に「これは素晴らしい!」と言っていたが、雨まで引っ張り込んじゃったんじゃないのかな?誰ともなく「雨さえ降ってなければねぇ~」なんて声も聞こえてきたので、この団体さんの中には雨男か雨女が潜んでいるに違いない。そんなこんなで列車は終着久慈駅へ到着、ツアーを組んで三鉄に乗るというイベントが入っていたようだ。少しでも利用客を増やそうとする努力の現れですね、きっとこれは。
さんりくトレイン北山崎
久慈駅に着いてみると、ここでも列車を待ってる団体客で溢れかえっていた。大型バスも乗り付けていて、場違いなくらいなぜか賑やかである。人の波を掻き分け、お隣にあるJRの駅舎へ移動、中には琥珀を売る店もあり、それなりに人の行き来もあるようだ。小さいながらも奮闘している様子が感じとれる。ふと思えば、ここから盛岡までバスを利用するという手があったかもしれないが、下調もしてなくその辺の事情はよく分かっていなかった。とりあえずこのまま、次の八戸行きの列車を待つことにしよう。ぶらっと外へ出て、そこらを見物しておきたい気もしたが、雨は止む気配すらなく降り続いていたので屋根のあるところでじっとしてるしかないようだ。
八戸線
どんよりとした天気の中、普通列車八戸線を揺られていく。先程までの北リアス線とは地形も少し違い、波打ち際近くを行く場面も結構ある。蕪島が見えてくると終点の八戸はもう間もなくだ。鮫、本八戸と見覚えのある駅を通り過ぎて列車は定刻で八戸へ到着。あとは新幹線で戻るだけだが、振返れば数多くの絶景に出会うことができて、それなりに楽しめたように思う。それにしてもはやてで一気に戻ってしまうのもあっけないな…。新幹線の青森伸張がまだまだ実感できないが、そう考えると東北地方がますます近く思えてきた。
東北新幹線・はやて