■旅日誌
[2009/5] 黒船襲来
(記:2009/6/20 改:2009/11/29)
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伊豆急のリゾート21、通称・黒船電車が臨時特急リゾート踊り子として南武線を走りました。これまでも東京を基点として運転されたことがありましたが、立川を始点に途中珍しいルートも経由して伊豆急下田を目指します。ちなみに南武線を特急列車が走るのは初めてのことだそうです。
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 日帰り
ルート概略
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立川、リゾート踊り子91号(黒船電車)、伊豆急下田
前振りの通り珍しい列車が近所を走るということだったが、今回は指定をとるのはムリとハナっから決めつけていた。1ヶ月前の指定発売当日の夜のこと、まさかな…とは思ったが、えきねっとを操作してるうちに、確かに残席△が出てきた。一瞬目を疑ったが、これを見逃してはいけないと思い、その場の勢いだけで購入手続きへ。そうと決まれば当日に向けて都合をつけることを考えなければならない。0系新幹線のときもそうだったが、運が向いてるときなんてそんなものかもしれない。それはそうと、南武線といわれても、あまりにも身近過ぎる(?)ので、あらためて興味を覚えるわけでもなく(思いつくことを強いてあげれば西府駅の開業くらい?)ある意味ノーマークだったが、このような企画をやると言われると逆に新鮮に思えてきた。人間、勝手なものである。
リゾート踊り子
南武線が開業したのは昭和2年、当初は多摩川の砂利運搬のために敷かれた路線だと聞いたような気がする。その後、旅客輸送がメインになったが貨物列車も日に何本かは運転されている。これでも首都圏の中では立派な黒字路線らしいのだが、昔から中古の車両が集められてたことで一部からは中古車センターなどと扱き下ろされてたように、どちらかというと地味な存在である。その昔、快速列車が走ってた時期もあるにはあったが、いわゆる優等列車は存在しておらず、特急列車が走るのも今回が初めてのことらしい。それもJRではなく会社線(伊豆急)の車両と、これまた珍しいことが重なったものだ。一応、伊豆・下田黒船祭にあわせて設定された列車ということになっているが、どうみてもその筋の方々(?)で賑わいそうな予感がする。
リゾート踊り子
立川駅の出発は10時半とそれほど早いものではなかった。中央線にも休日に運転される列車というものが走っているのだが、今日の主役は断然こちら、ちょっと異色な存在には間違えない。人ごみを避けるためにも隣のホームで待っていると、黒塗りのかなり目立った列車が川崎寄りから入ってきた。今日と明日の2日間運転されることになっているが、近くに停泊せずになんとご丁寧に伊豆高原から駆けつけて、夜も帰りも伊豆まで戻る予定が組まれてる。やはり南武線ホームでは相当目立つ存在とあり、普通に居合わせた人も物珍しそうに写真に収めてたりする。う~ん、こうしてみると伊豆急のロゴもなかなか絵になってるじゃない??
リゾート踊り子・浜川崎での折り返し
早速列車に乗り込み出発を待つ。この列車の特長は片側の席が海を向いてるところだが、リゾート21というシリーズではもう何代目かになるはずだ。特にこの編成はペリーで有名な黒船にちなんで黒く塗られておりその名も黒船電車と愛称が付けられている。近々、2代目リゾート21が引退になるようだが、今日は南武線を走行するために1両抜かれて6両と変則な編成を組んでいた。今日の指定はいうまでもなく売り切れ、どうやら横浜までしか行かない連中もかなり多いようである。列車は定刻に出発、もともと線形もいい方ではないところへ普通列車しか走らないダイヤなので、あまりスピードは出せない。沿線にはカメラを持った人が大勢詰め掛けていて、府中本町、登戸と停車していく。ふと考えてみると溝の口や武蔵小杉など、ここらは東急沿線であり、そう思うと横浜線ではなく南武線から東急系列である伊豆急へ乗り入れる…というのも納得がいく。検札にあたる車掌さんも不慣れな様子で汗をかきながらの作業だったが、自分から「暑くないですか?」などと照れながら応対している姿は妙に微笑ましかった。小さいながらも矢向車掌区と名前の入った乗車証明書を配ったりと意気込みのようなものを感じる。そうこうしてるうちに第一の見どころである尻手が近づいてきた。
リゾート踊り子
最初に川崎駅には入線しないと聞いたとき、おや??と思ったが、思いも寄らないルートを通っていくことになる。減速しながら尻手駅を通過し、ゆっくりとしたスピードで南武支線に向かって渡り線を抜けていく。南武支線や鶴見線といえば、都会の工業地帯でありながらどこかローカルなにおいのする不思議なところでもある。そこへきてこの様な異色な列車が通るというのも珍しい光景なはずだ。ややスピードを上げ、列車は先へ進む。浜川崎では旅客ホームのある方へは入線せず、踏み切りを越えて鶴見線と合流した先まで入ってきた。ここで一旦停止、時間調整をして向きを変えていくことになる。このように貨物列車の入れ替えを行う場所でじっと停まっているのも妙に面白い。数分して列車はゆっくりと走り出し、先ほど通ってきた川崎新町をもう一度脇に見て、八丁畷を右手に左へカーブしていく。今までも特に意識することなく貨物しか通らない路線がその辺にあるくらいにしか認識してなかったが、実際そんなところを通ることができたのは貴重な体験をしたように思えてきた。もう一度、鶴見駅の脇で運転停車、ここで乗務員が交代して東海道本線へと渡っていくことになった。(後日談:その後、意外にも再びこのルートを通る機会がありました。旅日誌はこちらをご覧ください。)
黒船祭
横浜を出たあとは伊豆急下田までひたすら走っていくだけとなる。残念ながら今日は天気があまりよくなかったが、こうして相模湾を眺めるのも久しぶりかもしれない。伊豆急線内へ入ったあと、突然、時代劇に出てきそうな格好をした人たちが車内をまわってきて記念撮影に応じたりしていた。どうも黒船祭の方から駆けつけてきたようである。あらためてこの列車のサボを模った乗車証明書を配ったりと、それなりに忙しくしているうちにもう間もなく下田へ到着する。その下田駅では派手なお迎えが待っていたのだが、ほとんど仮装行列状態、「タイムスリップの3日間」の通り、あまりの無茶ぶりには思わず苦笑してしまった。時代考証なんかまったくの無視、これじゃ日本を知らない外人さんが好き勝手に想像した昔の日本…って感じだ。お侍さんや町方風はまだいい方、お奉行らしき人もいれば、新選組っぽいのもいるし、町人の娘だか、芸者さんだか、幼い娘っこ、職人さんに、浪人さんに、挙句の果てにはペリー風の外人や、お公家さんに二宮金次郎まで…。着飾った人がお互いケータイ持ち出して黒船電車をバックに記念撮影に興じてる姿はどうにかならんものだろうか?帰りはお見送りもしてくれたが、二宮金次郎が 何か読みふけってるなと思ったら列車の時刻表、、、その昔、銅像にあったような姿には思わず苦笑してしまった。
伊豆急下田駅
毎度ながら一泊したいところだが、今日はトンボ返りすることにしていた。とはいえあまり急ぐ必要もないので、帰りは普通列車を乗り継いで戻ろうと思う。するとちょうどタイミングよくリゾート21が待ち構えてたので、先頭の展望席に陣取って眺めを楽しんでいこうと思う。今回も思わぬ幸運が舞い込んでくる格好になったが、乗りつぶし派(?)の心を揺さぶるような設定にはちょっと感謝したい気分である。ちなみにこの列車、7月と9月にもそれぞれ1回ずつ、土日に運行されることが決まったという。ツアーを組んで大々的に宣伝するなど、もっと広くアピールしてもらってはまかいじのように定着するようになると面白いかもしれない。一部のマニアだけのものにするにはあまりにももったいないので…。
リゾート21・展望席