■旅日誌
[2008/2] 流氷の海、オホーツク~冬の釧路湿原
(記:2008/4/11)
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冬は活動しません…などといいながら今年2回目の遠出です。「流氷を見たい!」と突然無茶なことを思いつき、そうなるといても立っても居られず、週末に1日休暇をプラスして2泊3日の旅へ出ることにしました。天気にも恵まれ、何より今年は流氷の当たり年だったようで、この上ない素晴らしい経験をすることができました。さらに、旅の締めとして北海道では初めてのSLにも乗車してきました。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
紋別、ガリンコ号II、オホーツクタワー
誰に言われたか記憶は定かではないが、何を思ったか「一生に一度はオホーツク海の流氷を見ておけ」という言葉をこの時期になって思い出してしまった。TVの旅番組などでもよく紹介されているように、北海道の冬を代表するもののひとつである。とはいうものの、厳冬期の北海道ともなれば悪天候で足止めされたりと、気楽なとんぼ返りが本当に大丈夫か心配になる。しかし、そんなことよりも、現実逃避の欲望が勝っていたのは言うまでもなく、すかさずスケジュール組みに取り掛かっていた。
オホーツク紋別空港
流氷といえば、まず思いつくのが網走である。そう、流氷見物の観光船も外せない。ちょっと調べてみると、普段は釧路や富良野を走ってるノロッコ号がオホーツク海沿いに遠征しているのも分かった。さらには札幌からのリゾート列車やら釧路のSLなんていうのもある。おや、何だ?紋別のガリンコ号??既に頭の中は果てしない妄想状態に陥っていた。(笑)
北海道上空
相変わらずの強欲さには自分でも呆れてしまうが、少し冷静になって日程を組んでみることにした。網走のほかにどうしても紋別釧路に行ってみたくなり、窮屈なスケジュールになるかと思いきや1日休暇をプラスすると比較的すんなり回れることが分かった。もうこうなれば一気に予約へ走るだけだが、やっぱり急な思いつきだっただけに往復の便がとれそうもない。(余談:2月の3連休がベストでしたが、流氷祭りやらイベントがありそこは外しかありませんでした。というか、大勢の人でいっぱいというのは避けたいかなと…。)少し時期を外して3月にしても運がよければ流氷は見られるらしいのだが、ぐっと確率が下がり、一方で釧路のSLの運行が終わってしまうのであまり好ましくない。そもそも、3月ともなれば仕事で休暇どころではないはずだ。いやいや、下手をすれば土日ですら出ずっぱりになる可能性が高い。う~ん、だめか…と少し諦めかけていたところ、逆に少し早めて2月1日の金曜を全力で乗り切れば、翌週月曜休めるような気が、、、もうこれしかないと決めてかかりANAのサイトを見ると、おお!空席がわずかにあるではないか。それもマイル消化キャンペーンで手持ちのマイルで往復の足代が浮きそうである。3日目に月曜日もってきたのでSLにも空席があるかもしれない。運が向いてきたぞ!
紋別市内
翌日、朝一でみどりの窓口へ走ったのは言うまでもない。その勢いで紋別行きの便と釧路からの帰りの便をすかさず押さえる。宿もまぁ何とかそこそこのところを予約して最後にガリンコ号の予約を入れる。2、3日前までは満席だったのが団体枠が開放されたらしく、うまいタイミングの便の確保ができた。こういった予約ものは運とタイミング、何というか勢いというのも結構重要だったりする。結果的に先週の銀河号の惜別乗車と2週連続のお出掛けとなってしまったが、本当に勢いだけで決めてる自分に正直少し呆れていた。
紋別・オホーツク海
前日はヒヤヒヤながら月初を乗り切り出発を迎える。というか、こういうときの集中力は自分でも褒めてあげたいくらいだった。思い起こせば全国空港めぐりと称して紋別には一度降り立ったことがある。それも中途半端なときで、あとからすれば今日の企画のため暖めておけばよかったのかもしれない。いや、あのときはあのときでいろんな空港をまわっていたので、余計なことは一旦頭の中から消し去る。羽田の出発は11時なので、多少余裕を持って家を出ることにした。早めに空港についていつものANAのラウンジで飛び立つ飛行機などを眺めながらしばらく時間をつぶす。
ガリンコステーション
紋別行きに使われるフリートはAIR NEXT籍のスーパードルフィンで、バスからの搭乗だった。「ちっちゃいなぁ~」という声がどこからとなく聞こえてくる。昨晩10時頃、いつものように事前予約向けに座席が多く開放されるタイミングを見計らって後ろ寄りの窓側の席を予約してあった。東京はすっきりとした青空で、気温は低いものの風は弱く穏やかな空模様だった。北に向かうにつれ季節風に運ばれてくる雪雲のせいでどうしても天気は怪しくなってくるものの、総じて悪くない天気だった。津軽海峡を越え、遠く襟裳岬を見ながら日高地方の上空を過ぎていく。東京から北海道へ向かう飛行機でこんなにきれいな風景を見た記憶はまったくなかった。
ガリンコ号II
大雪山系の上空で着陸へ向け高度を下げはじめると、風と雪雲の影響を受け始める。オホーツク海の上空で旋回するのかな?と思ったら、紋別市外の北側で右旋回をはじめ、らせんを描くようにして南側からのアプローチとなった。空港に近づき、あたりの様子がはっきり分かるようになるとそこは雪と氷で真っ白の世界だった。そこだけきれいに除雪された滑走路へ強めのタッチダウン、小雪が舞う中「いよいよやってきたな」という気分になってきた。ボーディングブリッジもなくタラップを降りると目の前には見覚えのある光景が飛び込んできた。建物にはロシア語で恐らくオホーツク紋別と書いてあるようだ。気温はおよそマイナス10℃、振返ると小雪に煙った太陽からは薄日が差し込んできて、ダイヤモンドダストがキラキラと輝いている。キーンと張り詰めた空気は明らかに東京とは違う。「おっーー、なんと気持ちのいい空気だろう!」既にテンションは最高潮に達していた。(笑)
紋別港
早速ここからガリンコステーションに向かってもよかったのだが、レンタカーかタクシーで向かうしか方法がないのでとりあえずそれは見合わせる。飛行機の到着に接続するバスで紋別市内へ直接向かうしかなく、途中下車できる適当な停留所もなかった。いつもなら少々長距離でもポコポコ歩いてしまったかもしれないが、さすがにこの気温では止めておいた方がいいようだ。雪もちらついてるし、凍りついた足場も結構やばそうで、何より気温マイナス10℃というのが、都会もののヤワな体にとってどんなものなのか想像がつかない。ということで、無難に紋別市の中心部までバスで移動することにした。空港連絡バスは座席が一通り埋まるくらいで、前回来たときよりもはるかに人が多かった。除雪されていない道路も結構多く見受けられたのだが、バスはお構いなしに飛ばしていく。慣れないものは運転しない方がいいようである。紋別の中心部に近づき、途中、ホテル近くのバス停で大半の人が降りていってしまった。早々にチェックインしてもよかったのだが、とりあえずバスに乗ったままバスターミナルを目指すことにした。終点のバスターミナルももちろん記憶に残っている。ここでレンタカーを借りたんだなぁ~と前回訪問したときのことが懐かしく思える。外へ出ると弱い日差しに凍った空気中の水分がキラキラ反射し、とても幻想的である。地元の人にとっては何気ないいつもの光景だろうけど、よそ者にはとても新鮮だった。
紋別の流氷
どちらかというと網走のオーロラ号の方が有名かもしれないが、紋別のガリンコ号IIも人気がある。今年は1月の接岸初日からずっーと流氷が居座り続けており、何年振りかの盛況だという。特に去年はほとんど流氷の姿が見られず、あってもほんのわずかだけで、地球温暖化の影響か、このままなくなってしまうのではないか?と本当に心配されたらしい。通常のでも日によって見られたり見られなかったりするので、運が悪いと何回来ても見られない人もいるのだとか。そう思うと、今日この日にやってきたのはとても運がいいようだ。紋別バスターミナルからはガリンコ号が出航するガリンコステーションへ向かうシャトルバスが出ている。先程とは逆にホテルに立寄っていくのだが、乗ってきたのは何となく見覚えのある人ばかりだった。そのまましばらく進むと、流氷に埋め尽くされたオホーツク海をバックにオホーツクタワーも見えてきた。おぉぉ、いよいよやって来たぞぉ!
紋別の流氷
バスを降りると次の出航に乗り合わせる人でごった返していた。早速窓口でチケットを引き換える。オホーツクタワーの入場券とセットになっており、そちらには船を降りたあと見学することにしよう。もうまもなく出航という時間であり、赤い船体のガリンコ号IIは満員のお客さんで賑わっていた。聞きかじりの知識によると、ガリンコ号とはその昔アラスカの海で探索を行っていた船で、船底の先にはアルキメディアンスクリューという大きなドリルが付いていて、ねじのようにグルグル回しながらガリガリと流氷を砕いて進むというダイナミックなつくりをした船である。その迫力のある様からガリンコ号と名付けられ、いま就航しているのはガリンコ号IIという名前が示すように実は二代目である。観光用に大きくなって収容人員が増えたのと、暖房の効いた控え室部屋があったりと、初代に比べるととても快適なつくりになっている。また、早朝の一便と夕方の最終便はチャレンジ便と称して、もし流氷が沿岸近くになかった場合でも時間を延長して流用を追いかけてくれるらしい。ちなみに、夏には釣り船としてガリンコ号は活躍しているという。今年の流氷は勢いもあって、の中で既にぎっしりと流氷で埋まっているので"チャレンジ"する必要はまったくない。
紋別の流氷
かつて流氷はただの厄介ものだった。オホーツクに面した紋別は漁業に適した良港だったが、冬になれば港も海も流氷に覆いつくされ漁に出れなくなる。ところがその邪魔者を逆手に取り観光資源に仕立てたという発想がとても素晴らしいと思う。流氷の生い立ちなど科学的な話はどこかで調べてもらうとしても、この流氷が命のもととなる栄養分をたっぷりと蓄えているのだからいい漁場となるのもうなづける。と、難しい話はそれくらいにして、念願の流氷ツアーに出掛けることにしよう。
紋別の流氷
船内放送でも、外は寒いので沖に出るまでは室内で待機しててください…といったようなアナウンスをしていた。しかしデッキは既に満員、自分も落ち着いていられずはずもなく、適当に海側のスペースを陣取る。3時ちょうどに出航し、早速氷を砕きながらガリンコ号IIは岸を離れていった。顔に当たる空気は冷たいものの、一面の流氷を目の前にテンション上がりっぱなしである。うわぁ、これはすごいぞ!!目の前で割れてく流氷を目前にして、少々興奮気味になってしまった。
紋別の流氷
オホーツクタワーの前を通り過ぎて港の外へ出る。陸地が徐々に離れていくものの、海はずーっと流氷に覆われていた。話には聞いていたが、この迫力は何とも言いようがない。少し厚めの氷に差し掛かると船体はゆっさゆっさと横に揺れ、演出のためだろうか、分厚い流氷に向かって進んで戻ってを何回か繰り返す場面もあった。運がいいとアザラシなんかの姿も見られるようだが、今日は天然記念物のオジロワシの姿が何回か見られた。
紋別の流氷
気温は低いもののとても穏やか天候だった。こちらに到着したときのように雪が舞うようなこともなく、薄日がさしている。風は無風といってもいいくらいで、時折船が速度を上げると顔に当たる空気がとても寒く感じた。陸地の方までずーっと流氷で覆われているため、波立つこともなくここが海であることを忘れるくらいだ。だが、船のすぐ近くに目をやると、割れた氷のかけらの間から海水が見え隠れするので確かにここは海である。ガリンゴ号IIは相変わらず流氷に挑みながら前へ進む。迫力ある映像を収めようとTVの取材もきていた。デッキにあふれ返ってた人の数も心なしか減ってきたようなので、ちょっと前の方にいってみよう。
ガリンコ号II・アルキメディアンスクリュー
アルキメディアンスクリューという大きなネジの先端のようなものが豪快に回転して本当にガリガリと流氷を砕いていた。言葉にはし難い迫力がある。しばらく見とれしまったが、さすがに少し冷えてきたので室内の様子も少しだけ見ておくことにした。暖房の効いた部屋には十分な座席があり、売店まである。なかなか快適なつくりをしているのにはあらためて関心してしまった。よし、もう一度デッキに出て流氷見物しておこう。
紋別の流氷
それにしてもあっという間の1時間だった。一応、チャレンジ便指定されていたのだが、そんなことはすっかり忘れるくらい迫力のある流氷の様子を間近に見ることができた。天気といい、流氷のコンディションといい、やっぱり自分には運があるのかもしれない…と妙に納得していた。そうこうしてるうちに、まで戻ってきてしまった。どうやら、オホーツクタワーの近くでも途中下船できるということなので、ここで一旦降りることにした。いやぁ、ありがとう!ガリンゴ号II!!なんて声をかけたくなるくらい爽快な気分にさせてもらった。接岸するとそこは足元がままならいほど雪が積もっていた。本当に別世界へ来てしまったのだとあらためて実感した。
ガリンコ号II
オホーツクタワーは海面下深くまで立ち入ることができる面白いつくりになっている。とりあえず、上階の展望エリアへ出て、ガリンコ号を見送る。びっしりと敷き詰められた白い流氷の中を、真っ赤な船体が進んでいく。とても絵になる景色である。今日ここへ来て本当によかったな~と同じ感想を何度も繰り返していた。建物に戻ってなかの展示物を一通り見てまわる。海面下の階ではガラス張りの窓もあるのだが、濁って外は何も見えない。それほど大きな施設ではないので、すぐにぐるっとひとまわりしてしまい、最後にクリオネが泳ぎまわる水槽を見たりして冷え切った体が少し元に感覚に戻るまで時間を過ごすことにした。
ガリンコ号II
オホーツクタワーは岸壁の先にあり陸地まで少し距離があるのだが、電動自動車で送迎してくれるようで、ビニール張りのちっちゃな乗り物でコトコトと移動することになった。地元の方も加わり、車の中で少し世間話などもしてみる。外は徐々に暗くなり、まもなく日が落ちるところだった。ガリンコステーションまで戻ってくると、ガリンコ号IIはもう既に今日の役目はすべて終えてしまったようで、ひっそりと佇んでいた。あたりは雪に覆わており足元もあまりよくなかったが、しばし北国の雰囲気の余韻を楽しむことにした。やがて紋別市内へ戻るバスがやってきてたので乗り込む。暖房の効いた車内はまるで別世界のようである。終着手前の宿の前のバス停で下車して今日はそのまま投宿することになった。さぁ、これから温泉と夕食が待っている。夢のような1日にはまだもう少し続きがある。
ガリンコ号II
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
網走、流氷ノロッコ号、知床斜里
広々としてとても快適なお風呂にこれぞ北海道という食事に満足して2日目を迎える。今日は都市間バスに乗って網走へ向かう予定である。宿の目の前のバス停からもそのまま乗車することができるようなのだが、ちょっと時間があるので、町中を少しだけ歩いてみることにした。今日も穏やかな天気でとても気持ちのいい朝である。とはいっても最低気温はマイナス15℃、まさに空気が凍る寒さではあるが不思議と気分は晴れ晴れしている。まずはの方へ行ってみる。漁船は陸に揚げられ、流氷に覆われた港は陸地と海の区別がよく分からなくなっている。足元に十分注意しながら、そぞろ歩きでしばらくウロウロしていた。
紋別市内
バスターミナルで目的のバスを待っていると、旭川方面へ向かうバスが先に出て行った。そういえばこの建物、元はといえば鉄道の駅だったはずだが、いまではどこにもそんな名残はない。目的のバスがやってくると乗り込んだのはわずか数名、ガイドさんまで付いて少しもったいない感じもする。途中、あるホテルで一人乗ってきたが、結局これだけの客だけで網走を目指すことになった。昨日もそうだったが、凍結した道でもお構いなしにバスは飛ばしていく。内地の人間にしてみれば、少々信じがたいが、他の車も当たり前のような走っているのでこれでいいのだろう、きっと。昨日流氷見物したところを経由し、初代ガリンコ号など見ながらバスは紋別を後にした。
サロマ湖
その後もバスは快調に飛ばしていた。左手にはずーっとオホーツク海白い世界が続き、時折ガイドさんの案内が入ったりと、あらためて旅をしてることを実感する。こうしてぼーっとしてるだけでも何だかとても贅沢な気分になってくる。途中、通りがけにみるサロマ湖能取湖も見事なまま水面は凍りついていた。紋別市内を出たあとは基本的にノンストップなのだが、わずかに停まる場所でガイドさんはいるはずもないお客さんをわざわざ確かめに降りていっていた。快適なバス旅はまだまだ続く。
常呂バスターミナル
常呂で一旦休憩が入り、その後、網走湖、網走刑務所の前を通って網走駅前までやってきた。ここまで乗ってきた人はみなここで下車するようだ、最後にガイドさんに軽く挨拶してバスを降りる。バスの最終目的地は網走の流氷観光船オーロラ号の乗り場なので、駅から何人かお客さんを乗せすぐに出発して行った。網走へはついこの間DMVに乗りにきたばっかりだった。と、まぁ深く考えずに次の目的である流氷ノロッコ号を待つことにする。少し時間があるので、駅で軽くお昼を済ませていると、ちょうど流氷特急オホーツクの風がやってくるところだった。
流氷ノロッコ号
オホーツクの風から降りてくる人の表情を見ると、誰もみな一応にやってきたな…という表情を浮かべていた。昨日の自分のテンションを思い出し、思わず笑いたくなる。流氷ノロッコ号は半分ほど自由席になっており、少し早く向かえば十分にいい席が確保できる。そういえばノロッコ号にはどこかで1度くらいお目にかかったような気がするが、釧路湿原や富良野と並んでここ網走で流氷を眺めるのも年中行事になっている。夏は開放感がウリだがこんな厳冬期は??とっても心配することはない。透明なアクリル板で窓は囲われおり、おまけにダルマストーブまで備えてあって、快適そのものである。ちなみに車内販売しているスルメをその場で炙ることもできるのもなかなか乙なものらしい。
流氷ノロッコ号
海側に面した席を陣取り出発を待つ。流氷ノロッコ号網走知床斜里の間を日に2往復している。紋別から移動して来たところで今日はうまいこと最後の知床斜里行きの便が捕まえることができたので、わずかばかりではあるがトロッコ列車の旅を楽しむことができる。列車は定刻に出発、やがてオホーツク海が目の前に見えてきた。
北浜駅
窓というより全面開放状態なので、見晴らしは格別にいい。こちらも流氷が絶え間なく広がっており、紋別とはまた違った表情をしていた。しばらくして北浜駅へ到着、数分間の停車ではあるが、席を離れて駅の様子を確かめにいく。早速、展望台に登り目の前のオホーツク海を眺める。流氷をバックにノロッコ号の姿がこれまた絵になる。「うぉっー、すっげーー!」誰ともなく、そんな声が上がる。こじんまりとした駅の中を少し見てから席に戻り、列車はすぐに出発となった。その後も原生花園など見ながら列車は走り続けていた。
知床斜里
そろそろ終点知床斜里駅が近づいてくると、心なしか流氷はまた違った表情を見せていた。去年の秋口に通ったばかりなのに、まったくの別世界には飽きることもなく、ただただ見入ってしまうばかりだった。そういえば、車内の案内放送の語り口調が妙に聞き覚えあるな…と思ったらそのDMVの試乗会のときのガイドさんそのものだった。(後日談:小ネタをはさんだり、DMVのときは歌を披露してくれたりとあまりにも饒舌だったのでプロのガイドさんかと思ったら、JR北海道の普通の職員さんようですね。後日、別の記事で知りました。)そうこうしてるうちに、あっという間に知床斜里に到着、正直もう少しこの列車で過ごしてもよかったな…と思った。
流氷
記憶にあった知床斜里駅と様子がまったく違っていたので少し面食らってしまった。明日のことを考えると今夜はここら辺で投宿してもよかったのだが、明日の列車のことを考えると始発駅から乗り込んだ方がよさそうなので網走駅までもどることにした。ここから折り返していく普通列車で、来た道をそのままもどることにした。相変わらずオホーツク海の流氷はびっしりと押し寄せたままで、西に傾きかけた日に照らされた様は若干赤みがかったようにも見えている。終点の網走が近づいてくると、遠くオーロラ号の姿もみることができた。
網走
網走駅に到着すると一段と気温は下がってきており、随分と寒さが増していた。明日は朝早いので、今日のうちに乗車券を買ってしまうことにしよう。今回もDMVのときに利用した宿を利用することにしてある。実はネットの口コミ情報がきっかけだったのだが、フロントの応対とカニ料理が気に入っていたので、迷わずここに決めてあった。古いながらも手入れの行き届いた施設、決して広くはないが居心地のいいお風呂と、まさに「癒されるなぁ~」といったところで、もしまた網走に来る機会があれば利用したいと思っている。それにしても日が落ちるとこれほどまで急に気温が下がるものなのだろうか。まさに染入る寒さは普段経験するものとはまったく違っていた。
オホーツク海・オーロラ号
 3日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
釧網線、SL冬の湿原号、標茶、釧路
列車の時間の関係で、今朝は日の出前から活動しなければならない。宿で朝食をとりたかったが、この列車を逃してしまうとえらいことになる。朝早いチェックアウトなのでいないかな…と思ったら、あのいつもの笑顔でお見送りしていただくことになった。外に出ると半端でない寒さが顔を突き刺し、一瞬にして目が覚めてしまう。の建物の中へ入り、改札が始まるのを待つ。座席の場所取りを意識しつつ、ホームに入るとすかさず足早に列車へ向かう。釧路まで行くキハ単行は座席の向きが固定されているので、眺めがいい場所が限れているのは十分知っていた。程なく座席が埋まったくらいだろうか、やがて列車は定刻に出発となった。
網走
オホーツク海が見えてくると、ちょうど朝日が昇ってくるところだった。雲が掛かっているのではっきりとはしなかったが、弱々しくも太陽は赤い光を覗かせていた。今朝もオホーツク海は流氷で覆われており、とても寒々としている。列車の後方に目を向けると、白い原野の中に線路がまっすぐ伸びているのが見えた。これで流氷も見納め、知床斜里を過ぎると列車は内陸の方へと進路を変えていく。
オホーツク海・朝日
ここからはまさに極寒の地と呼ぶに相応しい場所となる。見るものすべてが真っ白の世界で、まるで芸術作品のようは風景が続く。高速で飛ばしていると分からないが、少しスピードを緩めると窓の外はキラキラとダイヤモンドダストが舞っているのが確認できる。それこそ吹雪で大荒れ何てことになれば想像もつかない世界になるのだろう。緑駅網走行きと交換するために少し停車をする。路盤に目をやると降り積もった雪で線路がまったく見えなかった。こんなすごいところを列車はすっ飛ばしてきたんだ…。あらためて感心するばかりである。網走行きを見送り、再び列車は極寒の地を走り出す。車内はウソのように暖かで、大半の人が目を閉じたままおとなしくしている。流れる車窓はいつまでも白い世界が続いていた。
釧網線
サミット越えを果たした後は空もすっかり晴れ上がり見事なまでの快晴だった。今回も晴れ男振りを発揮したようだ。釧路湿原には思いつきでやってきたことがあったが、もちろん冬のこの時期にやって来るのは初めてのことである。とりあえずこのままこの列車釧路へ出て、今回の旅の最後の目的であるSLを待つことにした。いつしかSL冬の湿原号は道東の冬の観光列車としてすっかり有名になってしまい、つい先日には乗客数が通算15万人を超えたとやらでイベントが行われたようだった。外で待っていても仕方ないので建物の中で暖をとることにしよう。
SL冬の湿原号
平日ということもあり、観光目当ての人の姿は少ないようだった。そろそろ…ということになり、ホームへ出てSLが入線するのを待つ。やがて遠くから白い蒸気を上げてSLが近づいてきた。冬の湿原号を引くのはC11-171号機、もともと北海道で活躍していたのが、廃車後展示されていたものを動態復元しSLすずらん号として活躍したこともある。早速、ホームの先頭に向かい、その雄姿を記録に残すことにした。気温が低いだけに湧き上がる蒸気がより迫力を増す。さっきまで人は少ないと思っていたがそんなことはない、どこからとなく入れ代わり立ち代わりで記念撮影をする人が絶えなかった。発車時刻が近くなると「まもなく発車します」と、車掌さんが手持ちの鐘を鳴らしながらホームを歩いていた。
SL冬の湿原号
車内に乗り込むとほとんどのボックスはお客さんで埋まっていた。なんだ、全然空いてないぞ…。客車内の座席にはテーブルもあったりと観光列車用に改造されており、北海道にちなんだ動物のぬいぐるみなんかもディスプレイされていた。SL冬の湿原号はスルリスルリと走り始め、徐々にあのSL独特のカクンカクンという加速が伝わってきた。などと小さな興奮を覚えつつ、あらためて車窓に目をやる。何ともいえない満足感に浸る。少し落ち着いたところで車内探検をしてみよう。この列車にもダルマストーブがあって、売店ではやっぱりスルメが売られていた。最近北海道が人気だとは聞いていたが、大方の乗客は中国か台湾の方であることに気がつく。アルバイト学生と思しき案内役お兄さんは中国語での案内を示す腕章を巻いており、車内を行ったりきたりしていた。少し早いが、売店で買ってきたお弁当で車窓をおかずにお昼にしよう。
SL冬の湿原号
やがて列車釧路湿原の真っ只中を進み、湿地帯の水はところどころ凍っていた。今までみたことのない世界である。途中塘路駅で釧路行きの列車と交換するので一旦外に出てみる。今日は本当に文句のつけようのない快晴で、遠く阿寒岳の姿も目にすることができた。再びSLは出発し、雄大な風景がまだまだ続く。キタキツネやカモシカの姿も当たり前のようにみられ、茅沼駅ではちょうど丹頂鶴が飛び立つ姿を目にすることができた。まるで絵はがきのような光景だった。
釧路湿原
そしてSLは終点の標茶駅へ到着、釧路からの1時間強はまったくもってあっけないものだった。今日は折り返しもこのSLで戻ることにしている。一旦、駅の外へ出て列車の姿を見ておくことにした。しばらく近くをウロウロしたあと、ホームに戻って列車の様子を見ておく。標茶駅には転車台がないので、帰りは逆向きに引っ張ることになる。はぁ~~これで冬の北海道も最後だな、、、復路もまた釧路湿原の景色を堪能する。今回も思いつきからの行動だったが、少しだけ日常から逃避して英気を養うことができたように思う。心地よい旅の余韻を感じながら、こうして列車を後にすることになった。
丹頂鶴
帰りは釧路空港から一路羽田へ戻るだけなのだが、またまたここで欲をかいてしまい釧路駅近くの和商市場へ行って勝手丼のテイクアウトを買い込むことにした。運まかせの初めての冬の北海道だったが、少々出来過ぎかもしれない。いやいや、あれだけ仕事で大変な目に遭ってるのだから、これくらいご褒美があってもいいのでは??空の上から真っ赤な夕焼けを眺めつつ自問自答していた。
SL冬の湿原号