■旅日誌
[2006/12] おじゃれ、八丈島
(記:2006/12/4 改:2010/12/31)
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日も短くなったし荒天に遭遇する確率も高いので、いつもなら冬の時期に遠出するのは控えるところなのですが、思い切って今年の"締め"をすることにしました。というわけで、行き先はなぜか八丈島と大島。それも日帰り!と張り切ったのはいいのですが、後半で思わぬハプニングが待ち受けてました。ちなみに"おじゃれ"とは八丈の島ことばで"来て下さい"という意味だそうです。島のところどころで「おじゃれ」とか「おじゃりやれ」という言葉を目にしました。
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 日帰り
ルート概略
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八丈島、大島(~上陸できず)
多少仕事で無理してたこともあって風邪気味で体調が優れない日が続いていた。病は気からというわけでもないが、どこか出掛けたい気持ちも手伝って気分転換を図ることに、、、というと言い訳がましいが、いつものように思わぬアイデアが頭を過ぎり、どういうわけか八丈島大島を目指すことになった。GWの種子島・屋久島夏の奄美と、密かに離島ブームが自分の中にあるようだ。今までそれほど気にはしてなかったが、よくよく調べると羽田から1時間もしないでたどり着くことができる。ちょっと見落としてたかもしれないなぁ~などと思って、ざっとスケジュールをひねってみると、朝一に羽田を発って午前中で八丈島を巡り、正午をはさんで再び空路で大島入りして2~3時間滞在の後、ジェット船に乗ると夕方には東京へ帰って来れる。とまぁ、気がつけばANAと東海汽船のサイトでチケットを押さえ、レンタカーの手配などもちゃっちゃっと済ませていた。
八丈島空港
朝暗い時間に家を出て羽田空港のラウンジで日の出を迎える。雲ひとつない快晴とはこのことだろうか。八丈島行きの機材はA320、満席近い予約だったことは昨日の晩遅く、座席の指定を窓際に変更したときに確認していた。そうか、もう12月か、、、クリスマスソングのお出迎えにあらためて時の流れを感じる。羽田を離陸してそのまま内房沿いに南下して行くと、遠く富士山の姿も見える。太平洋に出たかと思うと、あっという間に着陸態勢へと入る。雲の中を突っ切るときに多少揺れはしたが、視界が開けたときは向こう側に島の姿が見えていた。東京からは直線距離で300キロほど、西に行ったら名古屋あたりだろうか。誰が言ったか「ひょうたん島」という表現がぴったりである。空港へは東側からのアプローチで、島のほぼ中央にある滑走路に向かってすーっといった感じで降りていく。八丈島には北側の八丈富士、南側の三原山とふたつの大きな山がある。空港の目の前にそびえ立つきれいな稜線の山が通称八丈富士である。今日はその北側半分をまわってみようと思う。
八丈島・ヤシの木の並木道
まだ9時前だが東京に比べると気温はぐっと高い。今朝の東京はこの冬一番の冷え込みだったので、余計その差を感じる。TELで送迎の連絡を入れレンタカーを受け取る。ざっと説明を受けて、早速八丈富士の登山道へと向かう。登っていく途中もすれ違う車はまったくない。山の中腹には、鉢巻道路といって一周6キロほどのいい道がある。眺めのいい展望台なんかもあって、これだけでもう十分に晴れやかな気分になれる。北側の牧場には牛がのんびりと佇んでおり八丈富士の頂が間近に見てとれる。海の向こう側には八丈小島の姿がぽっかりと現れていた。シンジラレナ~イ…とでも叫びたい気分ではあるが、1時間前まで東京の真ん中にいたなんてまったくウソのようである。いやぁ~毎度ながら本当に来てよかった。のんびりとしたいところだが、この先あまり時間もないので、登山道を降りた後、左回りに島の北半分を回ってみることにした。ところどころ狭かったり工事箇所があったりするものの、道の状態は悪くない。海しか見えない風景が絶海の孤島にいる雰囲気を思い起こさせてくれる。やがて、八丈小島が再び見えてきた。
八丈島・三原山
西側へ出たきたところで少し脇に入り、南原千畳敷へと向かう。黒いごつごつした岩肌に時折白い波しぶきが立つ。向こうに見える八丈小島の姿もまた絵になる。違う方角に目をやると、荒涼とした八丈富士の山肌や遠くの三原山の様子がうかがえる。木漏れ日のように低く垂れ込めた雲の中から漏れ注ぐ日の光もまた印象的である。風の強い中、しばらくこの景色に見入ってしまったが、意を決して出発することにした。あと1時間もあれば島の南側もめぐることができたのでは?と思うが、今日はあと1ヶ所だけ回って引上げることにした。
八丈富士
ところで、八丈島は東京都下なので、走ってる車はすべて品川ナンバーである。ちょっとだけ島の中心部を走ってから、大坂トンネルの方へと向かってみた。遠くからも見えていたが、急勾配を登っていくと突然トンネルに出くわす。昔は壁がむき出しの状態だったというが、いまは立派なトンネルになっている。その手前の急坂では大型車や小さな軽トラが道を譲るくらいなので、見た目以上に勾配はきついようだ。このトンネルの入り口から見える景色は息を飲むほどのスケールといわれており、実際目の当たりした八丈富士と八丈小島の姿はまさに絶景そのものであった。そんな景色に圧倒されたあと、残り時間も少なくなってきたので空港方面へ戻ることにした。レンタカーを返した後、空港まで送ってもらう。「慌しかったねぇ~」などと言葉を交わしたあと、お礼を言って八丈島を後にすることになった。
八丈小島
空港で予約を入れておいた島寿司を受取り、軽く昼食にする。島寿司のネタはアジやタイ、トビウオなど地元で捕れる白身魚を中心にいわゆるヅケにしたものであり、季節によってはサバやカツオなども使うという。一見した姿・形は江戸前のニギリに近いが、甘めの酢めしと合わせた味わいは関西の押し寿司を想像させる。それとワサビが手に入りづらいことから洋カラシを使うのも特徴であり、祝い事には欠かせない一品だと紹介されていた。また、魚だけでは飽きてしまうだろうとの配慮からか、岩のりのニギリがアクセントとして加えられているのだとか。その土地の事情に合わせた工夫に関心しながらも、早速試すことにしよう。しょう油で赤みがかったネタのとろっとした食感に、甘めのシャリと相まったカラシの程よい刺激が口の中に広がる。そんな小さな幸せに浸っていると、次の大島行きは、大島空港の気象条件が悪いのでもしかしたら降りれないかもしれない、というアナウンスが聞こえてきた。いつものようにそんな縁起でもないことは聞かなかったことにして、手続きを済ませて出発を待つことにした。
南原千畳敷
次に乗る便は、実は大島空港で便名を変えて羽田へ向かうことになっている。乗り継ぎ割り引きも設定されているが、今日は大島から船を利用して東京へ戻る予定なので、手持ちの航空券は八丈島発、大島着である。今度は元祖(?)スーパードルフィン、ANKによる運行で離島の景色をバックになかなか絵になる。半日ばかりの滞在だったが、これで八丈島を離れることになった。もし大島に降りれない場合には羽田に向かうとのことだったが、機長のアナウンスで御蔵島の案内があったときには、どうやら大島には定刻で降りれそうだとのこと。続いて三宅島が見えてくると、今でも噴煙が上がっているのがよく分かった。そういえば三宅島空港のある場所は有毒ガスの高濃度地域にあたるので、未だに定期便は休航したままである。
大坂トンネルから見た八丈富士と八丈小島
やがて大島の島影が見えてきた。島の北側にある空港へのアプローチは南西から近づいて北東へ回り込むようである。海面は白波が目立ってきており、これだと帰りの船は揺れるかもしれない。陸地が目の前に迫り、もう少しでランディングというところで突然機体がグラ、グラ、グラっと揺れる。あ、あれ、危ない?!嫌な予感はしたが、エンジン音とともに機は急上昇した。う~ん、これがゴーアラウンドってやつかい??胴体を中心にねじれるように上下左右の強い揺れを感じたので、素人目にもこれは尋常じゃないな…と直感する。よくゴーアラウンドするとため息が漏れるというが、機内は静まり返ったままである。というより、あの揺れを見せつけられれば、文句を付ける気にはなれない。今度はCAから再び着陸を試みるとのアナウンスがあった。8の字を描くように上昇し、先程と同様、西から東へ回り込み進入を試みるようだ。客室内はなおも沈黙が続く。1回目と同じルートで近づくと、またも滑走路の直前でねじれるような強い揺れを感じる。横から強くあおられてるのか、このまま着陸したら間違えなく翼が地面を擦りそうだ。大きなエンジン音とともに再び急上昇することになってしまった。
八丈島空港・八丈富士
う~~ん、とんだハプニング発生。天気がいいのに降りれないというのも何だか惜しい気もするが、もちろん命には代えられない。(苦笑) 再びキャプテンのアナウンスで、気流が乱れて危険と判断し着陸を断念しました…と告げられた。申し訳程度に冷たいお茶が振舞われ、そんなわけで機はこのまま羽田へ向かうことになってしまった。飛行機には何回も乗っているが、ゴーアラウンドもダイバート(到着地変更)も初めてのことである。少し怖かったが、まさか今日ここでこんな経験をするとは思わなかった。帰りの足がなくなり島に閉じ込められるのも困るが、門前払いというのも複雑な心境である。これは素人の勝手な想像だが、弱い寒冷前線が通過したあと、吹き返しの風が三原山にぶつかるか何かして島の北側の気流を乱していたのではないかと推測してみる。
三宅島
結局、羽田に到着したのは午後1時半過ぎ、何とも中途半端な時間である。バス搭乗口へ回されると専用カウンターが用意されており、払い戻しやら予約の入れ直しやら慌しい対応となった。不思議なルートに身をおく者としてはなかなかうまい説明もできず、こういうとき困ってしまうのだが、とりあえず手元にあった東海汽船の予約ページの写しを提示して、他の交通手段で大島へ向かう扱いとしてその分だけ保証してもらえることになった。もちろん今から船で大島へ渡ることは不可能なのだが、文句を言っても仕方がない。極端な話、この時間なら札幌でも福岡でも往復するくらいならできてしまうかもしれないが、いちど萎えてしまった気持ちはどうにもならない。最後に複雑な思いで到着フロアの行き方を教わり、外へ出ることになった。まぁ、お金を使えばリベンジはいつでもできるけど、あんなゴーアラウンドは頼み込んでもそうそうやってもらえないだろうし、そこは貴重な経験をさせてもらったということにしておこう。(後日談:この約2時間後の東京→大島便は無事降りられたようです。惜しい気もしますが、何度も言うように命には代えられませんからね…。ちなみに、大島にリベンジしたときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
大島