■旅日誌
[2016/12] 日本人の心を再認識する旅
(記:2017/6/24)
(記:2017/6/24)
今回も思いつきでの週末小紀行です。本当は紅葉の時期を狙っていたのですが、うまく都合がつかず冬の声が聞こえてくる時期になってしまいました。で、今回の目的地はただひとつ、島根県にある足立美術館です。日本一の庭園と言われて久しいですが、一回は見ておきたいとずーっと思っていました。
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1日目
午前中の米子便には中型のB767がアサインされており、そこそこの予約が入っていた。暦の上ではディセンバー(古!)、この週末も冬らしい天気が見込まれる。晴れ空の羽田を飛び立ち、東京の街並みを左側に見ながら西へ向け旋回を続ける。逆光の中、富士山、南アルプスの山並みを眺めて、小牧と各務原の滑走路が見えたあたりから徐々に雲が出てきた。琵琶湖の姿を見ることはなく、徐々に降下、客室乗務員も席に着くよう指示が出されたように日本海側はあまり天気はよくないようだ。少しでも揺れないようにとの配慮だろうか、分厚い雲の中、ルートを探りつつすーっと機首を下げ、視界が開けると美保湾の上空にいた。中海上空でギアダウンするとそのままライトターン、180度向きを変えランディング。素人が言うもの何だが、一連のスムーズな流れはさすが、、、さりげない操縦にキャプテンの力量を感じる。
前回、この空港に来たのは、もう10年以上も前のこと、いまでは米子鬼太郎空港なんて愛称が付いている。滑走路が延長され、境線が迂回ルートに移行したのに伴い米子空港駅が設置された。空港最寄り駅とはいえ、列車の本数は1時間に1本程度、こじんまりとした簡素なつくりはちょっと立派な田舎の駅といった風情か。列車を待つ間も、隣接する航空自衛隊や海上保安庁から飛行機が飛び立っていく姿が時折見られた。程なくして、妖怪のイラストが描かれたラッピング列車に乗り込み米子へ向かう。
30分弱で米子駅へ到着、無理に特急に乗り換える必要もないので、待ち時間を使ってお昼をとっておくことにしよう。空港が久ぶりなら、この駅に来るのも久しぶり、行き交う列車は思ったより更新が進んでないだろうか?改札の外には出られないので、ホーム側から駅そばを注文、そばそのものは期待できないが、温かいものがいただけるのはありがたい、、、が、それ以上に評判の吾左衛門酢(鯖寿司)2切れと、天ぷらのトッピングを付けて700円ちょいというのは、コスパ抜群。旅先でのこういう巡り合わせはちょっと嬉しい。
アクアライナーに乗り継ぎ、隣の安来駅へ移動、ここからは今回の目的地である足立美術館へ向かう。美術館までは無料の送迎バスで20分ほど、鷺の湯温泉、安来節演芸館の近くにある。さすがに人気の美術館だけあって、ハイシーズンではないものの、多くの人でに賑わっている。バスはすぐに満席になるらしく、帰りの整理券を受け取ってから見学に向かうことにした。足立美術館と言えば、ミシュランガイドブックに三ツ星登録されるなど、世界的に注目を集めている。特にその日本庭園の美しさは日本一とも言われ、四季を通じて楽しむことができる。残念ながら今回は紅葉のピークをちょっと過ぎてしまったが、それでも初冬の庭園は見てて圧倒される。完璧なまでの借景系、一方で人の手によって作り出された繊細な演出が見事にマッチしている。まさに見てて時間を忘れそうだ。
そして、足立美術館のもうひとつの目玉というと横山大観、ちょうど学芸員の方の解説が行われていて、ちょっと得した気分だった。圧巻の作品たちをこれでもかと見せつけられては、素人目にも心震えるというもの。入館料は2,300円とややお高めではあるが、公の美術館ではないというのが凄いところで、庭園と大観が堪能できると思えば、安いものかと…。機会があればまた別の季節に来てみたいものだ。いやぁ、東京から遥々やって来る価値は十分にあった。ちょっと関係ないが、この美術館のある鷺の湯温泉やお隣の安来節演芸館に立ち寄っているのも面白いかもしれない。帰りもシャトルバスに乗って、安来駅へ向かうことにした。
帰路の途中でお隣の荒島駅がちらっと見えたが、そういえばシャトルバスが通ってきた道は、かつて一畑電車の広瀬線が通っていたところで、出雲地方の中心地だったと思う。いまでは松江がこの地方の中心となっているが、歴史のいたずらというか、何となく興味深い話だ。安来駅へ到着する頃には、徐々に日も傾き始めていた。今日は松江に一泊することにしているので、このまま山陰線で松江駅へ向かう。程なくしてやってきた普通列車に乗り込む。先頭車改造され、黄色一色に塗装された顔つきだけみると、すぐには103系電車だということが分からないが、走行中のモーター音がどこか郷愁を誘う。途中遅れていた特急の待ち合わせなどしながら、30分ほどで松江駅へ到着、ちょっと早いかもしれないが、あとちょっとだけちゃんとしたお蕎麦でも食べておくかな。
2日目
帰りは適当な便が取れず、出雲空港からの最終便を予約、期限切れが見えてきたクラスJ-eクーポンが1枚余を消化してしまうことにする。というわけで1日持て余すことになったので、道すがら遷宮後の出雲大社にでも寄ってみようと思う。松江駅からぐるっと松江レイクラインに乗り込み、車内で松江の案内を聞きながら松江しんじ湖温泉駅へ移動する。そう言えば若干記憶が怪しいが、10年以上前にもこんなふうにバスに乗ったことがあったけ?駅に着いてみると、新型車両出発式と書かれた横断幕が出ていたが、そうかこれだったか、86年ぶりにオリジナル新車を導入するってのは…。今回はこれが目的はなかったのでスルーして急行に乗り込む。
本格的な冬を目前に山陰地方の空模様はぐずつき気味、通り雨がざっと来てみたり、日差しが差し込んできたりと、どこか慌ただしかった。これまた久しぶりだなぁ~何て思いながら、左手に宍道湖を見ながら先へ進む。途中、出発式に向かう7000系とすれ違い、何を思ったか一畑口で途中下車してみた。不自然にスイッチバックするのは、かつてこの先にも鉄路があったことを物語っているが、地元系のコミュニティーバス(1日3本!)を利用すれば一畑薬師まで足を延ばせそうだったので、急遽予定を差し込む。まぁ、時間はたっぷりあることだし…。行き止まりとなってる線路を見たり、一畑口を出発する電車を見送りしてるうちに、コミュニティバスが駅前にやって来た。予想通り他に利用する人もいないまま、バスは出発する。ちょっと寂しいものがあるが、これが現実というものだろうか。
昔、一畑電車の路線だった道路から左に折れると、その先は左右振られながら坂道を登って行くことになる。広い駐車場を抜けた先のバス停で降りて、あとは徒歩で一畑薬師へ向かう。途中参道のような感じではあったが、大半の店は閉まっていて少々寂しい。まぁ、シーズンでもないので仕方ないけど…。駅からここに来るまで目玉おやじの銅像がいくつかあったが、そうか目のお薬師さまだからね。背後に宍道湖を見ながら長い階段を登っていくと、立派な山門があり、お寺の建物が見えてきた。
帰りのバスまでたっぷり時間があったので、境内の中をあちこちとゆっくりまわり、さらにもう一度宍道湖を見たりしながら、時間を潰す。それでもまだまだ時間を持て余してしまったので、空いてるお店を探してお昼をいただくことにした。愛想のいい人に導かれ中へ入るとストーブが焚かれており、少しほっとする。結局、今日もまたお蕎麦になってしまったが、普通の割子そばと熱盛りのセットを注文、これはこれでありかと…。さらに時間があったので、無意味に境内をもう一周し、先ほどは気が付かなかった結縁の木など見てバス停のところまで戻ってきた。案の定帰りのバスもまた貸し切り状態、先程とは別ルートでさらに離合困難な狭い道を下りていく。
一畑口に戻り、出雲大社方面の列車を待つ。おぉ!通り雨が去ったあと、虹が出ている。すっかり塗装は変わってしまったが、かつてはよく利用してた旧東急の電車で出雲大社へ向かう。一畑電車に乗って出雲大社には何度か来たことがあるが、平成の大遷宮後、初めての訪問になる。駅横にあるデハニ52を見た後、鳥居の方へ歩いていく。玉砂利の参道をしばらく進み、拝殿にたどり着く。続いて境内の西側へ抜け神楽殿を見てから、出雲大社を後にする。