■旅日誌
[2009/10] 惜別、キハ603
(記:2009/11/25 改:2009/12/15)
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ちょっと気がつくのが遅くなってしまったのですが、紀州鉄道を走っていた最古参の車両(キハ603)がいよいよ現役を退くことになりました。9月にすぐ近くを通ったのですが、寄り道することを計画に盛り込んでいなかったため素通りしてしまい、定期運用最後の日に急遽和歌山まで遠征することにしました。
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 1日目・2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
紀州鉄道・キハ603
そういえば春先頃から、もうわずかかもしれない…なんていううわさを耳にしていたが、気がつけばギリギリになってしまった。そうだったのか、、、と、やり過ごせばよかったのかもしれないが、紀州鉄道で活躍していたキハ603がこの週末で定期運用から外れる、と正確な情報を知ったのはほんの数日前で、三沢の航空祭から戻ってきたばかりだったが、何を思ったか急遽行動を起こすことになった。日本一のミニ鉄道を名乗る紀州鉄道は、和歌山県の南部にある御坊という街を走るローカル線で、全長2.7キロ、わずか5駅を8分程度で走り抜けてしまう。厳密にいうと日本一のミニ路線は芝山鉄道だったりするのだが、あちらは特殊な事情も見え隠れするので、感覚的にはこちらが日本一小さいといってもいい。いま降り返ると、何か特別な思い入れがあったわけでもないが、前にも有田鉄道などとあわせて訪問したのはよく覚えている。
紀州鉄道・キハ603
紀州鉄道には今回引退するキハ603の他にもう1両在籍しているが、老朽化が進みこれ以上現役を続けるのは困難との判断が下り、3両目が調達されたという。ちなみに、前回来たときは、キハ603ではない方のキテツ2形だったので、キハ603に乗るのは、今回が最初で最後ということになる。発表された情報によると、来月何かのイベントついでに引退式を行うらしいが、定期運用からはこの週末に退くことになっている。それにしても歴史の生き証人のような車両が、平成のこの世までよく現役で生き残ったものだと、あらためて感心してしまう。ついに終焉がやってきたわけだが、最後にお見送りはしておきたと思っていた。
紀州鉄道・キハ603
特に理由はなかったが、今回は思い切って車で往復することにしていた。往路では東名=名神を通しでいくのではなく、名古屋の手前で伊勢湾道へ入り、東名阪=新名神を通るルートを試してみることにしている。距離・時間ともに短くなるようで、草津で名神に戻ったあとは、吹田から近畿道、阪和道を経由、最後は湯浅御坊道で御坊ICまで向かう。結果としては、距離600キロを休憩を含めて8時間ほどで走破したので、途中渋滞があったことを加味すればまぁまぁのペースではないだろうか?料金の方はところどころ1000円割り引きの効果もあり、めちゃくちゃ安く済んでいた。それにしても、伊勢湾道といい、新名神といい、オーバースペック振りは明らかで、こんなお金の使い方をしてりゃぁ~景気もおかしくなるわけだ…。
紀州鉄道・キハ603
御坊にたどり着いたのは、まだ午後4時前だった。とりあえず予約してあった宿へ直行しチェックインを済ませ、車を置いてから御坊駅へ向かった。この時間だったら、余裕で西御坊まで往復することができるだろう。運転間隔は1時間に1~2本といったところなので少しダイヤを見ておく必要はありそうだが、何とか日が沈む前に列車に乗れそうである。御坊駅では紀州鉄道の切符は売っていないので、車内で精算しなければならない。JRの改札口で申し出ると、何のチェックもなくさらっと通してくれた。紀勢線の電車なども見ながら次の列車がやってくるのを待った。
紀州鉄道・キハ603
しばらくすると、コトコトとキハ603が入って来た。この古いキハはもともと週末にしか姿をみることができず、今日、明日と最後の運用に就いている。季節も移ろいでいく中、HMを掲げて走る姿はどことなく哀しげだった。熱心に撮影してる人たちに混じって、ちょこっとだけその姿を記録に残しておこう。早速車内に乗り込むと、床は板張り、冷房も扇風機もなく、座ってみればシートもすっかりくたびれ切っている。それでも、窓の取っ手や天井の電燈、独特の油の匂いはどこか懐かしい感じがしてたまらない。まるで骨董品といったような風貌はまさに昭和の光景、、、いやぁ、よくもまぁこんなものが走っていられたものだ…。ドク、ドク、ドク、、、というエンジンのアイドリング音を響かせながら、出発までもう少し待つことになった。
紀州鉄道・廃線跡
でもそんな光景も今日、明日限り、、、 まさに老体にムチ打って…という感じが伝わってくる。列車御坊駅を出発し、紀勢線に別れを告げ、左にカーブするとしばらくは田んぼの中をのんびり行くことになる。学問駅に続いて、紀伊御坊へ停車、ここは紀州鉄道の本社も兼ねており、途中駅の中では駅らしい駅である。ただ、部品取りのために置いてあるキハ604はすっかりボロボロで痛々しく、いま乗ってる車両もいずれ朽ち果ててしまうのだろうか?置換えのためにやって来たキテツ3形は、屋根のある車庫に収まってるようで、その姿を目にすることはできなかった。次の市役所前を後にすると、間もなく終点の西御坊へと到着する。
紀州鉄道・キハ603と紀勢線117系
西御坊駅前回来たときとまったく様子は変わっていなかった。折り返しまでの時間で少し間があるので列車のまわりでも見ておくかな…。からも少し離れてみると、廃線跡が結構生々しく残っており、その先の方まで線路が続いているのがよく分かる。そちらを冒険してみるのもありかもしれないが、もう間もなく暗くなってきてもいい頃なので、とりあえず今日のところは折り返しの便御坊駅まで戻ることにする。
紀州鉄道・キハ603
予約した宿は、すぐ脇を紀州鉄道が通っていて、踏み切りも近くにあり列車が通るたびに、窓からその姿を眺めたりしていた。(余談:逆にそれが気になって仕方ありませんでした。)開けて翌日、今日がラストランになるのだが、終電を前に早めに引っ込んでしまうらしい。まぁその前に帰らなければならないのだが、、、昨日のうち1往復はしてあったが、折角なので朝9時前後の便で1往復しておく。昨日同様御坊駅から乗車し、沿線の景色を眺めながら西御坊まで乗りとおす。特に何をするわけでもなかったが、たまたま窓口が空いていたので記念に硬券の切符を購入、いいお土産になったみたいだ。あまりウロウロしててもただ長居したくなってしまうので、断ち切るようにして帰ることにした。帰りの道順のことまでは気がまわってなかったので、御坊からはひたすら高速道路で…と思ったが、途中、気が変わり、名阪国道(25号)を経由していくことにした。思ったより渋滞はなく、東京には夕方前に余裕で戻ってくることができた。あっけなく2日間が終わってしまったが、何か物足りないような、虚しいような、複雑な気分だった。
紀州鉄道・硬券と精算済票