■旅日誌
[2005/12] 天上界を垣間見たか?
(記:2005/12/11)
(記:2005/12/11)
気持ちも体も疲弊しきったところに週末お休みがもらえることに…。前回のインド出張以来ほとんど休みなくすっ飛ばしてましたので、とりあえず今年の"締め"を意識しつつ気分転換をはかることにしました。本格的な冬が目の前まで来てましたのでちょっと迷いましたが、信貴~生駒山を目指すことにします。関西ですのでさすがに慌しく日帰りするのも何なので、一泊はさんで車で往復してみることにしました。
※下線部をクリックすると写真が表示されます
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1日目
2日間時間をもらったところで少々突拍子もないことを考えていた。なぜか意気込んでしまったケーブルカーの乗りつぶしだが、まずは効率を無視してひとつに絞って遠征することを決める。ところで、残ったターゲットはすべて関西にあり、日帰りでちょちょいと行き来できる場所ではない。そこで今回は思い切って一泊はさんで車で往復してみることにした。前々から考えていたように、来春のけいはんな線の開業に合わせて生駒のケーブルへ寄るとして西信貴ケーブルもまとめると、残りは天橋立になる。しかし、初冬とはいえ冬場に積極的に出向くような場所でもないように思える。ということでちょっと考えをあらためて西信貴ケーブルだけ目指すことにした。
高速を順調に飛ばせば東京から大阪までは7時間程度と見積もってみた。まぁ途中休憩を入れるとして7時間半から8時間を見ておけば余裕だろうか。向こうには遅くても4時前には着きたいので、逆算して家を出るのを8時と決める。結局、普段の生活パターンとそう大差はない。日々の寝不足が蓄積しているのはイヤというほど実感していたが、やはり旅に出るということでその辛さもちょっとは軽く思えてきた。要は気持ちの問題だろう。一泊だし自分の車での移動なのでそれほど準備に手間をかける必要もない。走行距離メータをゼロ・リセットして出発することにした。
横浜青葉ICから東名に乗る。大和トンネルのあたりで渋滞にかかるが、それほど"重症"ではなかった。当たり前だが、高速道路を走り続けるというのは単調過ぎてあまり面白いものではない。だからといって、居眠り運転するわけにもいかないので、まぁなんとなく休憩をはさみながら先へ進むことにする。記憶が正しければ、自分で運転した中で東名で一番遠くの場所は確か浜松西だったような気がする。景色がよさそうなので浜名湖SAで休憩を入れることにした。お昼にはまだ早く、ちょっとした間食程度のものでブレイクを入れる。きらきらと湖面が光っていたのが印象的だった。豊橋の検問を抜けたところで、いよいよ遠くへきたなという気分になってきた。名古屋を越え東名から名神へと肩書きが変わり、岐阜で新幹線と並行する区間は見覚えのある場所である。こちらから新幹線を眺めるのはもちろん初めての経験だ。養老SAで食事を…と思ったが、急に雨が激しくなり、やむなく通過することにして多賀のSAまで向かうことにした。
その後渋滞することもなく、ペースもよかったので京滋バイパスを経由することにする。多少こちらの方が変化がありそうだったが、大きく景色が広がったところはすぐ近くを男山ケーブルが走っている。再び名神にもどり、吹田を経由して近畿道へ入る。がんばり過ぎたか、まだ2時を回ったところだったので最後のPAで今夜泊まる宿に連絡を入れる。チェックインは早めの3時からOKで、車も事前に置いていいとのことなのでまっすぐ向かうことにした。八尾ICで高速を降りたところでガスを補給しておく。燃費は…リッター12キロ、よしよし立派、立派。2.5リッターのノーマルエンジンでもこんなに走るものかと関心する。
駐車場に車を置いてとりあえずチェックインを済ませ、そのまま近鉄八尾駅へ直行する。ホームに上がったところで特急列車が通過していった。近鉄カラーのスマートな列車をみたところで関西へやって来た実感がわいてきた。普通列車で一駅だけ進み、信貴線へ乗り換える。以前ここへ来たときは、すっかり日も暮れていたのであらためて景色を眺める。生駒山系の東側の斜面が壁のように目の前に迫ってくる。西に傾きかけた日ざしに照らされた姿は、12月という季節の割には紅葉がきれい映えていた。
信貴山口駅でケーブルカーへ乗り換える。山の斜面を見上げると伸びた線路の先に踏切が2箇所あることが確認できる。踏み切りのあるケーブルカーというのは全国的にも珍しい。出発まで時間があったので、一旦改札の外へ出てみた。冬場は行楽シーズンでもなく何か寂しい感じがする。出発時間になったが、他に乗り込んでくる人はまったくいない。貸切状態のまま出発し徐々に高度を上げていく。ふと振り返ると麓の景色はぐんぐん離れていき、遠く大阪平野の先まで見渡せるようになってきた。こうしてケーブルカーに乗って景色が広がっていくのは何度経験しても楽しいものだ。中間地点で上下すれ違うと、向こうも黄色にトラの絵柄の同じデザインの車両だった。頂上の高安山駅からは、バスに乗り継いで信貴山方面へ出るのが定番ルートのようである。だが、今日はそちらに行くことは考えていない。
生駒山の上空は伊丹へ降りる通り道になっているため、頻繁に飛行機が通過していく。佐賀から飛んできたときも生駒上空で旋回していたことを思い出した。近くには八尾空港があって遊覧目的のヘリコプターや小型機も見てとれた。ケーブルカーは30分おきに出ていたが、1本落として1時間後の便に戻ることにする。展望台が近くにあるので、そちらへ行ってみよう。目の前に広がる大阪平野の大パノラマはずーっと先まで続いている。まさに絶景である。大阪空港へ向かう飛行機は相変わらずひっきりなしに頭の上を通っていくものの、空港の場所までは分からない。数百メートル離れたところにも別の展望台があるので、そちらへ向かってみた。山道をとぼとぼと歩いていくものの、誰ともすれ違うことはない。展望台にはごみがとっちらかっていて、人が生活してるような不気味な感じがする。上に登ってみて再び大阪の景色を見渡す。日も沈みかけてきて、明らかに気温はぐんぐん下がっているようだ。徐々に街の灯りがともり出し、これから夜景が楽しめる時間帯になるのだが、風も強くなってきて寒くてたまらないので下山することにした。
景色も十分堪能できたので再びケーブルカーに乗って戻ることにした。車両のデザインは行きと同じだったが、荷台がついている。そういえば荷物運搬という重要な役割も持っていると聞いたことを思い出した。信貴山口駅へと戻ってきたころにはすっかり日も暮れていた。12月なので日が短いのも無理はない。とはいうものの、何となく中途半端な感じもして、歩いて高安駅へ行ってみることにしてみた。
2日目
昨日はまずまずの天気だったが、今日は朝からパラパラと雨が降っていた。天気予報によると時間が経つにつれ、全国的に雨の確率は上がるとのこと。ここのところ大きく天気が崩れるようなことはなかったので、この空模様にはちょっと恨みたくなってきた。昨日のうちにケーブルカーの乗りつぶしという目的は果たしていたので、今日は帰り時間が遅くならない程度に寄り道することを考えていた。毎度ながら旅の朝の始動は早い。ホテルでサービスに付けられた朝食を7時前には済ませ、チェックアウトする。やや遠回りになるが、石切近くまで北上して阪奈トンネルを利用してみる。大阪の東に聳え立つ生駒山の麓を一直線に突き抜ける格好で、奈良側に出たところにある壱分ランプで降りて南下する。国道168号はちょうど近鉄生駒線に沿ったような感じにあり、時折駅や踏み切りと交差していく。
8時には法隆寺近くへ到着していた。いつだったか京都観光をしたことがあったが、今日も修学旅行気分で法隆寺を拝観させてもらうことにしていた。自分でいうのも変だが、ガキの頃にはものの価値なんてほとんど理解できていなかったと思う。国宝級の歴史遺産に直接お目にかかれる機会ができたと考えるとありがたくも思えるのは、やはりこの歳になってみて分かったことだと思う。そんな理屈話はいいとして、拝観時間は8時からなので人に邪魔されない静かな状況で見学ができそうだ。お寺の門前にある駐車場はどこもまだ営業前らしく、とりあえずその辺に1時間くらい止めさせてもらうことにした。
南大門から入り、五重塔がある西院伽藍から見学するのが順路のようだ。冷たい雨は気になるものの、この場所にいるというだけで凛とした空気を全身で感じることができる。回廊から見る均衡のとれた五重塔はなんともきれいな姿をしている。やはり実物は写真で見るのとは比べ物にならないほど圧倒的で、宗教的な意味合いも持ちあわせた造形美に下手な解説はいらない。講堂でお参りを済ませたあとは、続いて百済観音像などを見学することにしよう。お堂という言葉はふさわしくない建物には国宝級の仏像などが納められている。最近建て直されたというだけあって、どちらかというと博物館といった趣だ。ここも人がまったくいなかったので、ゆっくり観て回ることができた。休みの日の早朝、この時間帯は狙い目かもしれない。一旦外へ出て順路的には最後の夢殿へ向かうことにする。数百メートル東に離れた場所のこじんまりとしたたたずまいは、遠い記憶をたどってもこんなものだったのかよく覚えていない。都合1時間ほどいただろうか、ひとしきり見学して今日はこれで引き上げることにした。
法隆寺を後にして、帰り道に信貴生駒スカイラインを通っておくことにしていた。雨はやむどころか、明らかに強くなってきている。目立たない看板をたよりに狭くて急な上り坂をしばらく行くと信貴生駒スカイラインがようやく見えてきた。生駒山系は大阪と奈良の境に聳え立つ壁であり、そこに登れば遠く大阪の街並みと奈良盆地を見渡すことができる。残念ながら、今日はこんな天気なので景色を楽しむことはできなかった。適度にアップダウンを繰り返し先へ進む。それなりの標高があるので雲の中を走っているのと同じであり、、、と、イヤな予感はすぐに的中…。そのうち雪が混じり出してきた。もちろんノーマルタイヤなので急カーブが続く坂道は慎重に運転しなければならない。もう最後の紅葉と雪景色を同時に見るとは思いもよらなかった。本当ならところどころ車を止めて景色でも確かめておきたかったが、この天気ではどうしようもない。
南側から尾根づたいに北上し、信貴生駒スカイラインを通り切ったところで進行方向を大阪市街方面へ変え、カーブがきつい急な坂道を下っていく。いま通ってきたところを振り返ると、灰色の雲が山頂付近をすっぽり隠していた。もしかしたら雪はもっと強くなっていたかもしれない。帰りも近畿自動車から名神へ抜けるルートで素直に帰ることにした。実は車で大阪を往復するのは初めての経験だったが、何となく距離感がつかめたような気がする。忙しさに追われてるうちに気がつけばもう12月である。年末がやってくる実感はまったくしないが、とりあえずこれが今年の締めになりそうだ。季節が変わって暖かくなる頃には、今の辛さも少しは楽になっているだろうか?