■旅日誌
[2004/11] 日本晴れ!
(記:2004/11/28)
(記:2004/11/28)
いつもなら連休でもない単発の祝日にお休みをとるというのはほとんどあり得ない話しなのですが、この日は戦略的(?)なこともあって敢えて会社に顔を出すのをやめることにしました。もちろん自宅に仕事を持ち帰るということも考えられなくはないですが、情報を持ち出すということに少々リスクを感じますので、余程のことがない限りそれはしません。ということでぽっかり空いた1日でしたが、運良く天気もよさそうなので近場へちょっとお出掛けすることにします。
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日帰り
とりあえず今回"乗りつぶし"はお休みである。普段の朝とほとんど変わらぬ時間に家を出る。山手線に乗るまではいつもの通勤経路そのままなので、取り立てて珍しいものがあるわけでもない。唯一違うのは通勤ラッシュではないことで、こんなに楽に電車に乗れるのが夢のようだ。乗り換え途中で切符を買うために窓口へ向かった。最近では券売機で特急券が買えるのだが、タッチパネルから選択できる行き先は既に仕込まれたところに限定されるため、今日行くところへはみどりの窓口へ行かなければならない。窓口はいくつかあるのに人が座っているのは1ヶ所だけで待ち行列ができてしまっていた。こういうところはコンビニのレジでも見習って欲しいものだ。
山手線もウソのように空いている。他の通勤電車も似たようなもので、ホームはどこかがらんとしていた。東京駅では乗り換えのために長い距離を移動しなければ京葉線のホームにたどりつくことができない。途中新幹線の改札口の近くを通るものの、新潟中越地震で部分運休している上越新幹線のことが気になってしまう。1ヶ月以上経ったいまでも全線開通には至ってないが、どうにか年の瀬ギリギリのところで運転再開を考えていると聞いた。徐行区間は残るものの、全通しているのとそうでないのとでは雲泥の差がある。在来線の被害はさらにひどく未だ復旧のメドが立たないらしいが、一刻も早い回復を願いたい。
京葉線のホームへ降りると、外房線の特急がちょうど出発するところだった。最近置き換えられた車両はまっさらといった状態で、近づくと新車独特の匂いがする。2面4線ある京葉線のホームも特急、快速、各停とひっきりなしに入替えがある。武蔵野線のトラブルの影響で直通列車のダイヤに乱れが発生し、特急と出発の順番を入れ替えるなどの処置が取られていた。
新型車両といって華々しく宣伝はされているのだが、ベースはあずさなどに投入されてる車両で、そのマイナーチェンジ版といってもいい。今日これから乗るビューさざなみもデビュー当時はかなり新鮮に感じられたが、いま思うとその流れで方々の特急が置き換えられているため、徐々に印象も薄れてきた感じがしないでもない。折り返しとなるまでの間しばらくホームで待ち、準備が整ったところで乗り込む。白地に青と黄色がベースの華やかな外装とは違って、内装は落ち着きのある感じがする。先程の外房線特急わかしおに比べると席は空いているようだが、普段の平日なら木更津方面へ向かうビジネスマンなどもっといるに違いない。ビューさざなみは静かに発車となった。地下区間を抜け地上に出てくるとぱぁっと広い空が車窓に広がり、まぶしい日差しが車内に差し込んでくる。こうして京葉線に乗るのも実に久しぶりのような感じがする。一昔前は展示会などで幕張へ足を運ぶ機会もあったが、今ではすっかり遠のいてしまっている。この区間で特急に乗るのも初めてだが、晴れ渡った景色を眺めるのもなかなか気分がいい。並行している首都高が妙に渋滞しているなと思ったら、湾岸線の西行き本線上で事故があり一部通行止めになっているようだ。東京ディズニーリゾートの駐車場は既にぎっしり車が停まっていたが、夏に通りかかったときよりも混雑している。船橋のスキー施設もなくなってしまい、幕張近くのマンションも増え、随分と景色が変わっていた。
思えば年明け早々にここらへ来たことがあったので、内房の風景はどことなく記憶に残っている。晩秋とは思えない日差しの中浜金谷駅へ降り立つ。東京から100キロちょっとしか離れていないのに、内房線は1時間に1本程度しかない。実にのんびりとしたところだった。早速駅を後にし、人の流れに沿ってロープウェー乗り場へ向かうことにする。国道を行き交う車はそれなりにあるものの、基本的に金谷は小さな漁村という感じがした。駐車場の空きを待つ車列の脇を徒歩で登っていく。観光バスも何台か駐車してありロープウェーを待つ列は外まで延びていた。5分に1度でピストン輸送をしているので、それほど待たなくてもいいと言っている。箱根のときと同じように、ここでも記念写真を撮って売りつける商売をやっていた。もしかしたら幼少の頃にでも鋸山へ登ったことがあったかもしれないが、このロープウェーに乗るのは初めてのはずだ。ここの山麓駅も時代をスリップしたような場所で、京成グループだったのを初めて知る。眼下の景色を見ながら、ゴンドラはぐんぐんと上っていく。三浦半島はすぐそこにあり、遠く富士山も頭をちょこんと覗かせている。4分ほどで山頂駅へ到着する。今では貴重となった硬券切符を記念にもらい、早速屋上の展望台に登ってみた。いやぁ、東京湾の景色がとても素晴らしい。見渡す空は雲ひとつなく、まさにこれぞ日本晴れといった感じである。ありきたりな表現だが、息をのむ程の絶景だ。はぁ~来てよかった。
ここまで来たからには、日本寺の境内に入らない手はない。というよりも、鋸山探検をしないわけにはいられない。(笑) 拝観料(入山料?)と引き換えにもらった案内を見ると、結構見所が散在しているようだ。おまけに、高低差のある階段が込み入ってあちこちにある。現に目の前を通り過ぎてく人はみなふーふーいってる。ちょっと覚悟を決めてはみるものの、どこをどう行っていいのかいまひとつ分からない。とりあえず急な階段をいく段も下りていく。その分登ってくることになるだろうなぁと思いながら、千五百羅漢道というところを歩いてみた。小さなお地蔵さんがまとまってまつられているところがあちこちにある。山の斜面を切り開いたところや、洞窟のようなところなどもあり、ひとつひとつ見てまわる。他にも、滝やら坐像やら本当にいくつもあった。山道はまるで森のようで、鋸山全体がお寺の境内と考えてみるとよく分かる。ちょっと人通りが途絶えると不気味なくらいだ。穏やかな表情をしているもの、時とともに風化が進んでしまってるものなど、いくつもの石像が立っていた。さらに階段を下りていくと、有名な大きな大仏が視界に入ってきた。脇の説明を読むと、長い間放置されて荒れてしまっていたものを再建したという。立派な大仏の前で合掌する人の波は絶え間なく続いていた。その高さは圧倒されるばかりだが、仏様独特の美しさと同時に何か気持ちを和らげてくれる感じが伝わってくる。
一休みしてもうひと回りしてみることにした。仮のものであると案内されていた本堂の前を通り、再び階段を登っていく。鋸山へは、ロープウェーのほかに登ってくる方法がいくつかある。車が通れる道路もひとつではないようで、入り口が何箇所もあった。最初に入ってきたロープウェーからの入り口を通って十州一覧台へ登る。ここらからひざの痛みを感じ始めたが、再び東京湾を眺め見る。浦賀水道を行き交う船もミニチュアのおもちゃのようだ。開通したばかりの館山自動車道や内房線の線路も模型のように思えてくる。いったん十州一覧台を下りて、地獄のぞきへと向かう。鋸山は尾根の形がギザギザのところから名付けられたというが、建材用に大量の石が切り出された跡が垂直に立って絶壁となっている。ちょこんと残されたところが地獄のぞきと呼ばれるようになり、そこから眼下を見下ろすと足元がすくんで吸い込まれるような錯覚に陥ると言われている。あまり高いところは得意ではないので、そこそこにして立ち去ることにした。まさに日本晴れといった中、アップダウンを繰り返して行ったり来たりしてるうちに、かなり汗をかいてしまっていた。最後に百尺観音を拝んでから下山することにする。岩切場と思われる断崖絶壁のところを進むと不思議と冷やりと感じる。その奥の少し開けたところに観音像がある。その表情はどこか日本離れしていて、違う国のもののような不思議な感じがする。帰りはロープウェーを使わずに、登山道を伝って下山していくことにした。鋸山の標高は300メール程だというが、ロケーションといい形のユニークさといい、とても印象的な場所であった。金谷港を示す案内を頼りに、険しい道を下りていくことになった。
山道を下り切ったところで踏み切りの音が聞こえてくると、ちょうど内房線の普通列車が目の前を通過していった。いわゆる"横須賀色"の車両は妙に懐かしさを覚える。足元で見慣れる動きをする物体があるなと思ったら、小型の蛇が元気よく通り過ぎていくではないか。普段の生活で蛇など見かけることはないので、少々驚いてしまった。再び金谷の町中までやってきて、一休みついでにちょっと遅めの昼食をとることにした。海草の入ったラーメンが有名だったと聞いたので試すことにする。今日はあまり予定を立てずに来てしまったが、日が高いうちに帰ることを考えよう。もちろん(?)同じ道を帰ってもつまらないので、フェリーで久里浜へ渡ることにした。立派なカーフェリーは45分おきに出航しており、ちょうどいま出ようとしているところだった。夏真っ盛りな時期に比べれば利用する人は少ないようだ。先程から気になり出した左ヒザは、曲げるたびに妙な痛みを感じる。山道で無理をしたせいか歳のせいかよく分からない。(笑) 雲ひとつない快晴の中、順調にフェリーは浦賀水道を進み、およそ35分の所要時間で久里浜港へ着岸した。
久里浜港から路線バスで京急久里浜駅まで移動する。車でフェリーを利用した人でない場合は、ほとんどこのバスに乗り継ぐことになる。京急久里浜駅はお洒落な感じのする駅で商店街にも続く表玄関と言えば、一方でJRの久里浜駅は何百メートルか離れたところにあり、また違った雰囲気のする駅である。いわゆる"どんずまり"の終着駅で、港町の風情を漂わしている。折り返していく横須賀線の車両は"最近"のつくりをしたステンレスカーで、昔の横須賀色の電車の方がこの駅の雰囲気に合うような気もする。ヒザの痛みのせいではないのだが、今日は何となくグリーン車を利用してみることにした。中途半端に残高の残ったIOカードが手元にあったので消化に充てよう。最近のダイヤ改正で湘南新宿ラインが大幅に増発されたのをきっかけに、休日のグリーン料金が値下げされた。高崎線・宇都宮線にもグリーン車が充当され、こういったサービス向上はJR東日本にしては珍しいかもしれない。もっとも、JR東日本のことなので日銭を稼ごう…という向きもしないでもないが、、、
久里浜駅を出るときは貸切状態だったが、鎌倉駅で一気に席が埋まった。少々の+αでワンランク上のグリーン車に乗れるのは、確かにリーズナブルかもしれない。途中、ホリデー快速・鎌倉号が出番を待っているをちらっと目にしたが、横須賀色のお古があてがわれていた。優等列車ではないとはいえ、もうちょっとグレードの高い車両を使ってもいいのではないだろうか?それこそ房総方面で一線を退いた特急車両なんか使ってもバチは当たらないと思うのだが…。フェリーに乗るときはまだまだ早いと思っていたが、いつの間にか日が傾きかけていた。小春日和の快晴の中、すっかり忘れかけていたが11月も下旬なので仕方のないことかもしれない。少々物悲しい気分にもなってきたが、突然思い立った小紀行とはいえ、天気もこの上なく素晴らしくとても有意義な一日であった。